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ほんの少しだけ触れる、純からの柔らかな口付け。
彼は、焦らしながら、ゆっくりと顔を離していく。
不意打ちの出来事で、恵菜は何が起こったのかを理解するまで、少し時間が掛かってしまった。
「純…………さ……ん……」
「恵菜…………さん……好きだ……」
彼の無骨な手に頭を引き寄せられ、恵菜の唇が奪われる。
「んうっ……」
鼻に掛かった吐息が、彼女の艶めいた唇から零れると、純は小さな唇に舌を割り入れてきた。
「……っ」
彼女の口腔内を、彼の舌がネットリと蠢き、恵菜の舌を絡め取ろうとする。
筋張った大きな手が細く括れた腰を這い、妖しく撫で回されていた。
「うぅっ…………んうぅっ……」
恵菜は苦しくなったのか、縋るように彼の部屋着の胸元を掴むと、唇を重ねながらも、純は恵菜の背中を支え、ベッドにそっと横たわせた。
唇を離し、純は恵菜の頭の横に両手を突き、見下ろしている。
彼の瞳の奥に宿る優艶な色は、爽やかな雰囲気ではなく、男の色香を漂わせていた。
純に眼差しを突かれ、恵菜は背けられない。
いや、背けるのを許さないと言っているようにも見える。
彼女は、改めて純を見つめ返した。
大きすぎず小さすぎない、若干目尻が下がった奥二重の瞳は、もうすぐ三十五歳になるとは思えないほどの若々しさ。
出会った頃、短めで緩くパーマの掛かった髪は、今では少しだけ伸びている。
中学と高校時代、バレーボール部に所属していただけあり、上背のある筋肉質の体躯は、服の上からでも存在を醸し出していた。
「…………恵菜……」
ひとしきり、純に見下ろされていると、彼は切なそうに唇を歪め、彼女に覆い被さりながら強く抱きしめる。
吐息混じりの声音で、初めて彼に名前を呼び捨てにされた恵菜。
背筋がゾクリと泡立つと、電流のような痺れが小さな身体中に迸り、彼女の胸の奥で甘やかな痛みが疼いた。