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夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
向井が人魚の姿になり実に1ヶ月と2週間程だったか、少し前から向井に異変が起き始めていた。
🧡「ゔぁ〜……あかん、最近ホンマに良くない。
俺どうかしとる…」
明らかに情緒が不安定になることが増えた。
理由もなくイラついたり、落ち込んだりしてしまう。
数日前の夜も…
<ガシャンッッ!!>
🧡「あっ… 」
🖤「っ! 康二、怪我ない?」
🧡「めめ…ご、ごめん。俺やるから」
夕食の片付けをしていたとき、思わず手を滑らせ食器が割ってしまった事がある。
🖤「いいよ俺やるから」
🧡「俺やるって言うてるやん!俺が割ってんから!」
🖤「あ、…わかった…」
🧡「めめは向こう行っとって!…あっ…ごめん。めめに当たってもうて…」
気を使ってくれた目黒に当たってしまったのだ。 こんな事が度々起こるようになった。
目黒に迷惑かけないようにしたいのに、早く自立できるようにならないといけないのに。
むしろ最近は迷惑しかかけていない。
目黒は最近仕事が遅く終わることが多く、家で1人でいる時間が長い。暇さえあれば水に浸かり悶々と余計なことを考えてしまう。
🧡「なんで俺、人魚なんやろ…」
今更すぎるがそんな事まで考える。
🧡「人魚…」
ふと気になり向井はスマホを手に取り、ネット検索をかけてみる。
【人魚 】[🔍]
単語だけ入力すると下に複数の検索候補が出てくる。
その中で、ふと気になる関連ワードを発見した。
【人魚 歌声】[🔍]
思わず検索をかける。1番上に出てきた記事を読むとこんな事が書かれていた。
──────人魚の美しい歌声には強い魔力があり、聴いた人間は正常な判断力を失い、海へと引き寄せられ溺死する。
──────航海者を歌声で惹きつけ船を難破、破滅させる海の魔物と言われている。
🧡「歌声…え…?」
この記事を読んでフラッシュバックしたのは2週間前のこと。
目黒が向井にキスをしてきたあの日のこと。
あの日の目黒は少しおかしかった。
目が虚ろだったし、呼びかけても返事がなかった。
そして、目黒本人がキスのことを覚えていなかった。
確かあの日は目黒の出演ドラマの主題歌のリリース日だった。
目黒が倒れているのを見つけるまで…向井はイヤホンで音楽を聴きながら歌っていた。
🧡(…めめが…あんなんなったんは…俺の歌を聞いたから?…俺のせいで…?俺が…人魚になったせいで?)
🖤『ごめん…!俺、もしかして康二に…』
🖤『ほんっとごめん。あのまじで、覚えてなくて…』
申し訳なさそうに謝る目黒の声が甦る。
謝るべきは自分の方だった。
目黒がキスをしたんじゃない。
自分が目黒にキスをさせたのだ。
あの時自分の鋭利な歯のせいで目黒に怪我までさせた。
自分のせいだった。自分が人魚になってしまったばかりに、目黒を巻き込んだのだ。
🧡「俺……俺っ!めめに……!俺のせいで…」
ソファで蹲り、自責の念に駆られる。メンタルが不安定なことも相まって徐々に涙が浮かんでくる。
🧡「…グスッ、誰や…? ラウール?」
着信画面にはラウールの名前。
涙を拭い、気持ちを少し落ち着かせ電話に出る。
<ピッ>
🤍「あ、康二くん?今大丈夫?」
🧡「ラウ久しぶりやな!大丈夫やで、どないしたん?」
できる限りの明るい声で応える。
🤍「今度のオフ久しぶりに遊べないかな〜って。めめとは今日も現場一緒なんだけど康二くんとは会ってないなと思って」
🧡「そ、そういや会ってなかったな!…あー、最近ちょっと忙しくてぇ…遊びたいんは山々なんやけど…その…」
ラウールは向井が人魚になっていることを知らない。返事の歯切れが悪くなってしまう。
🤍「あ、そうなの?ざんねーん」
🧡「ご、ごめんやで!また今度な。というか今日めめと現場一緒なんやな」
🤍「そうそう、ついさっき撮影終わって帰りの車も一緒だよ」
🤍「あっ、そういえば康二くん。めめの映画の話聞いた?」
🧡「映画…?あっ、オーディション受けとったってやつ?」
🤍「そうそう! めめ受かったらしいんだけど、なんか断るかもって」
🧡(…え?)
向井は動揺する。
自分が目黒から聞いた話と違う。
🧡(めめは…落ちたって…)
🧡「そ、そうやったん?俺、結果は聞いとらんかったわ」
🤍「あれ?そうなの? 康二くんにはてっきり言ってるのかと」
🧡「ほかには、めめなんか言うとった?」
🤍「なんか都合が変わったとかなんとか。
蹴ったらもったいないと思うんだよね。カナダだよ?ハリウッドだよ?? 大チャンスなのにさ」
カナダ。 ハリウッド。
そんな大きなオーディションに目黒は受かっていた。
🧡「ハリウッドいうたら…帰って来れんくなるでな」
🤍「そりゃね、何ヶ月も向こう行っちゃうだろうね」
都合が変わった。
もしかして……
🧡(俺が…おるから?)
頭が真っ白になる。
🧡(俺が、1人で生きれんから?)
自分がここに居るせいで、目黒が飛躍のチャンスを逃そうとしている。
合格したオーディションを断ろうとして、自分には「落ちた」と嘘をついた。
断ったといえば、向井が自分を責めることを見越して、こんな優しい嘘をついたのだろう。
🤍「康二くん?どしたの?」
ラウールの声にうまく返事ができない。
🧡「急用思い出したわ。ごめんな、またな」
<ピッ>
半ば強引に通話を切った。
1人になった瞬間、涙が溢れてきた。
🧡「ゔぅ…はぁ…おれのっ…おれのせいで…!俺がおるせいで…!!」
もう何も考えられなかった。
自分の存在が目黒に迷惑をかけている。
自分が目黒の人生の足枷になっている。
ここからいなくなれば、目黒はカナダへ行けるのだろうか。
🧡「めめ…ごめんな…ごめん…」
風呂場なら、後処理が比較的楽だ。
刃物なら、キッチンにある。
🤍「あれ?康二くん?…んー…?」
🖤「ラウールおまたせ」
🤍「全然〜、帰ろっか」
2人はスタジオから出て送迎の車に乗る。
車の中では最近の仕事の話をしていた。
🤍「さっき康二くんと久しぶりに電話したんだけど康二くんも最近なんか忙しいって言ってた。」
🖤「康二?…俺も最近会ってないかなー…」
ラウールに怪しまれないように、在り来りな返事をする。
🤍「さっき康二くん、ちょっと様子おかしかったんだよね」
🖤「様子が?大丈夫だった?」
🤍「なんか最後急に電話切られちゃって…」
目黒は最近向井の精神の不安定さが気になっていた。1人にするのが心配なくらい。
<ピロン>
目黒のスマホの通知音がなった。
嫌な予感がしてすぐさま確認する。
向井からだ。
────🧡『ごめんな。』
背筋が凍る。
目黒は勢いよくラウールの肩を掴む。
🖤「ラウール! 康二と何話した!?」
🤍「えっ!?…え、その…普通に遊びに誘って…」
🖤「それだけか?正直に言え!」
🤍「あと…めめの映画の話…」
🖤「映画…カナダのやつ?」
🤍「う、うん…もしかして、まずかった…?」
目黒の表情が強ばり視線が揺らぐ。
その時、あまりにタイミング良く目黒のマンションの前に到着した。
<ガタッ!>
目黒は何も言わず送迎車から飛び降り走ってマンションの中に入った。
🤍「めめ!?」
始めてみる目黒の様子にラウールはただならぬ予感がした。
🤍「ごめんなさい、俺も降ります!ありがとうございます!」
ラウールも追いかけるように目黒のマンションに入っていった。
コメント
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うわ、この話、胸がぎゅっとなる展開だったな…。向井くんが自分の歌声で目黒さんにキスさせたって気づくところ、自責の念がひしひし伝わってきて辛かった。しかも目黒さんがオーディション受かってるのに「落ちた」って嘘ついてたって知って、自分が足枷になってるって思っちゃう流れ…。人魚の設定がここまで切なく効いてくるとは思わなかった。最後の「ごめんな。」のメッセージと、目黒さんが走って帰るところ、どうなるんだろう。続きがすごく気になる。