サイコロは彼女の問いに苦笑いを浮かべてこう返す。
「スゴロクとか鬼ごっことかです。でも、これからはレイくんとは前みたいに遊べないかも。」
「え?なんでよ?喧嘩でもしたのかしら?」
やはり彼女は知らないようだ。
サイコロはこれまでの経緯を彼女に話した。彼女は悲しい表情を浮かべ、こう言った。
「サイコロくんとレイくんにそんなことが… 私、サイコロくんに嫌な質問をしてしまったわ。本当にごめんなさい。言い訳をさせてもらえるならば私、非常勤だから、あまり内部のことは詳しく知らないのよ。」
「そうだったんですね。僕もたまにしかあなたを見かけなかったから気になってたんです。」
「私ももう少し、この施設のことについて知らないといけないわね。あの子達のためにも…」
「あの子達?」
「なんでもないわ。あら、もうこんな時間。私そろそろ職場に戻らないといけないから行くわね。植物に関しては詳しいから、また気になることがあったら聞いてちょうだい!」
立ち去ろうとする彼女に、サイコロはこう問いかける。
「あの?!あなたの名前を教えてくれませんか?」
彼女はこう返す。
「ごめんなさい。サイコロくんのことばっかり聞いて私の自己紹介がまだだったわね。私はマリエ。ここの職員からは基本マリーって呼ばれてる。私、こう見えて医者だから、この施設の子達の体を診に来てるの。また時間があったら庭園に来るわね。一人じゃ暇でしょう?」
「ありがとうございます。それと、もし機会があればでいいんで、レイくんの様子が分かったら教えてもらえますか?やっぱり、レイくんのことが心配なんです。」
「サイコロくんは優しいね。自分だって辛いだろうに… 分かったわ。レイくんは私の担当じゃないけど、探ってみるわ。あなたに神の加護があらんことを。」
マリエはこう言い、庭園を出ていった。一人になったサイコロはこうつぶやく。
「寛大な愛か。僕にそれがあれば、レイくんやロビンくんともこれまで通りになれるのかな。」
一方、庭園を出たマリエも独り言をつぶやいていた。
「本当にここは酷い施設ね。みんなを助けたいけど、今の私にはできることが少ない。 まずは、スズちゃん達のことを考えないと… 」