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~数時間後、所長室~
「所長、レイさんの検診が完了しました。」
ムーンがレイの検診を終わらせ、所長に報告をしている。
「ご苦労さま。レイに取り付けている装置を外してあげてくれ。」
ムーンによって取り付けられていた装置を外されたレイは、ベッドから起き上がる。
しかしレイの目は虚であり、表情もない。まるで目を開けながら寝ているような様子である。ムーンが所長にこう問いかける。
「所長。前回の検診と同じく、体に異常は見受けられません。」
「そうか。良いことだ。」
「一つ提案をしてもよろしいですか。」
「なんだ?」
「当機はレイさんの精神を元に戻すべきだと考えます。」
所長はこう返す。
「前回レイの体を診てもらった時に言ったはずだ。今のレイは精神的に不安定なのだよ。改善の見通しが出るまでこの状態の方がいい。」
「感情すら出せない状態をあまり長く続けるべきではないかと。」
「何が言いたい?」
「今のレイさんは死んでいるも同然です。感情は生物にとって最も大切なもののはずです。」
所長はため息をつき、こう答える。
「確かに感情というものは、生物にとって必要なものだ。たが、その感情によって自身を滅ぼしてしまうこともあるのだよ。そして今のレイはその状態だ。」
「記憶を取り戻すことがそんなに悪いことなのでしょうか。」
「なぜ君がそれを知っている?伝えてないはずだが。」
「レイさんの脳を解析した時に分かりました。今のレイさんは感情を表に出せませんが、内心ではあなたに対する憎悪で満ちていると思われます。」
所長はムーンの話を聞いて顔をしかめたが、笑顔を無理やり作りこう答える。
「さすがだな。やはり最新式は違うということだ。レイの体を診てもらう以上、君に隠し事はできないということか。」
「なぜレイさんに対してこのような処置をしたのですか。」
「私にとって、都合が悪いからだよ。レイは私にとっての”大切な実験動物”だからな。研究に不要な部分は取り除く必要がある。」
「それが本心ですか。」
「あぁ、そうだよ。」
ムーンは少し間を置いてこう答えた。
「当機はロボットなので人間についてはまだ勉強中ですが、所長さんは限りなく人間らしいですね。」
「どういう意味かね?」
「人間は欲望を常に持つ生物だと勉強しました。所長はレイさんやサイコロさん、この施設の研究動物達に対する支配欲を持っています。そして、その欲を包み隠すことなく思う存分に発しています。所長は自身の欲に忠実なのです。」
所長は笑顔を浮かべ、皮肉を込めてこう返す。
「ほう。私の精神的なところまで診てくれるのだな。ありがたいことだ。」
所長はこう続ける。
「話はこれぐらいにしよう。今日はもう帰りなさい。後の処置は私がやる。」
ムーンを帰した所長は検査の片付けを終わらせて、flesh techno Lab(ムーンの開発先)に電話をかける。
「remake. research instituteの所長だ。ムーンについて、社長と話がしたい。…」