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純と想いを通わせてから数日後。
彼は恵菜の気持ちを尊重してくれているようで、昼休みは、ファクトリーズカフェで挨拶して少し会話をする関係が続いている。
仕事の後、二人で一緒に帰ったりする事はない。
恵菜は、十七時で退勤だけど、純は、時折残業する事もある。
その代わり、以前と比べたら、メッセージのやり取りが格段に増えた。
『おはよう』と『おやすみ』の挨拶は欠かさない。
仕事を終えた恵菜は、ロッカールームに向かい、私服に着替えると、スマートフォンをバッグから引っ張り出してチェックする。
通知センターの一番上に表示されているのは、純からのメッセージ受信。
思わず笑みが溢れてしまう恵菜だけど、その下にあるのは、元夫、早瀬勇人からのメッセージ受信の通知。
(…………何の用だっていうのよ……)
顔を顰める恵菜は、気を取り直して純からのメッセージを読む。
『恵菜、お疲れさま。今度の金曜日、月に一度の向陽商会本社での合同会議なんだ。いつもなら、午前中に会議なんだけど、この日は午後イチから会議だから、カフェで昼休みを過ごせないよ。残念!』
「え……純さんのスーツ姿、見たかったなぁ……」
純からのメッセージを読み、恵菜はガクンと首を垂れた。
胸の内から漏れ出たセリフを、そのままメッセージ入力欄に打ち込む。
『純さん、お疲れさまです。純さんのスーツ姿、見たかったです……。残念!』
入力を終え、純にメッセージを送信した後、恵菜のホワンとした気持ちが、急速に萎えていった。
(…………とりあえず、早瀬のメッセージを見てみるか)
恵菜は渋々と、勇人から送られてきたメッセージを開く。
『恵菜。いい加減、俺の気持ちを分かって欲しい。俺はお前を失って初めて、恵菜を愛していると痛感したんだ。今度の金曜日の十七時、お前の職場の近くにある公園で待っている』
(っていうか、今更感がすごいんだけど……!)
相変わらず、自己中心的な元夫に嫌悪する恵菜だけど、全てに決着をつけるチャンスでもある。
(純さんには…………伝えた方がいいのかな……)
不意に、恵菜の中に浮上する疑問。
でもこれは、自分の問題。
純の手を借りずに、恵菜自身で解決しないといけない、と思い直し、彼には黙っておく事にする。
(後輩と不倫して、人をブタ呼ばわりしてたヤツが……よく言うよ……。いい機会だし、ここでハッキリさせよう)
恵菜は、小さくため息をつくと、元夫に返信を打ち始めた。