テラーノベル
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美花が諦観したのか、寂しげに眉根を下げつつ、言葉を繋げる。
「彼に振られた私は…………恋をしてはいけないんだって……ずっと思い続けてきた。だったら私は、趣味に生きるって決心した。でも……」
「…………」
全てをかなぐり捨てた美花の姿に、圭は息を殺すように彼女を凝視する。
今すぐ美花を強く抱きしめたい。
だが、ソファーセットを挟んだ距離は、美花が『これ以上近寄るな』と言っているように、圭は感じた。
彼女が表情を濡らしながら、さらに言葉を綴っていく。
「決意してから数年後……圭ちゃんと出会った。恋をしちゃダメだって分かっているのに…………いつの間にか、圭ちゃんの事……好きになってた。でも…………私の病気の事、リストカットの事を言ったら…………圭ちゃんはきっと……私から……離れていくだろうって思ったから……言えなかった。それでも圭ちゃんは……!!」
彼女の顔立ちがクシャクシャに崩れ、絞り出すように泣き叫ぶ。
「圭ちゃんは私の事…………大切で愛おしい存在だって言えるのっ!?」
全ての思いを吐露し切っただろう美花が、息を弾ませながら、圭に目を据えた。
「美花……」
圭は、クローゼットからバスタオルを取り出すと、彼女の元に歩み寄る。
小刻みに震えた細い裸体を包みながら、美花を掻き抱いた。
「美花はずっと…………身体の事、失恋の傷を俺に言えなくて……苦しかったな。だが…………」
圭は、筋張った腕に力を込め、小さな頭と細い腰をさらに引き寄せる。
「美花が先天性の病気だろうと……左腕に傷があろうと…………俺には関係ない。俺にとって、美花の全てをひっくるめて…………大切で愛おしい存在なのは変わらない」
やるせない表情を浮かべた圭は、ひとしきり美花の艶髪を、慈しみながら撫でていた。
──美花は俺にとって、唯一無二の存在。
抱きしめている腕の中で、美花が身じろぎをさせる。
「ありがとう…………圭ちゃん。でも……」
潤んだ薄茶の瞳に、圭は見上げられた。
「ごめん。今日は…………体調が悪いから……帰るね」
力なく微笑む美花に、彼は虚を突かれ、腕の力を緩めると、彼女は圭に背中を向けて、黙々と下着と服を身に着けていく。
「…………美花?」
彼の彼女を呼ぶ声が悲哀に滲み、部屋に虚しく響くと、身支度を整え終わった美花が圭と向かい合い、微笑みを貼り付ける。
「じゃあね。圭ちゃん」
芯の通った彼女の声が、圭の鼓膜を震わせたまま、美花はバッグを肩に掛けると、静かに部屋を立ち去った。
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恵