その頃、賢治は菜月とは表面上、仲の良い新婚夫婦だった。ただ夜の生活はうまくゆかず、セックスレスだった。その捌け口を吉田美希に求めたが、物足りなさを感じ始めた。そんな時、目眩く時間を過ごした過去の恋人である如月倫子が幹事をしている同窓会の知らせが届いた。賢治は目を輝かせた。参加せずにはいられなかった。
「菜月、今夜は遅くなる」
「同窓会だよね?」
「あぁ、先に寝てろ」
「分かった、お酒飲みすぎないでね」
「そのままホテルに泊まるかもしれない」
「分かった」
賢治はあわよくばそのまま如月倫子と熱い夜を過ごすつもりでホテルの部屋をリザーブした。
(倫子はどこだ)
同窓会会場に足を踏みれた賢治はその姿に見惚れた。生活感に塗れた主婦たちの中で倫子は35歳の妖艶な色香を漂わせていた。
(相変わらずそそるな)
黒いノースリーブのタイトな膝丈ワンピース、シースルーの黒いストッキングに黒いピンヒールを履いていた。
(良いじゃねぇか、いい女になったな)
艶めく黒髪、色白の面立ちに切長の奥二重、深紅の口紅、形の良い胸の谷間にはパールのロングネックレスが揺れていた。
「あら!四島しじまくん、久しぶり」
「いや、今は綾野だよ」
「あぁ、そうだったわね。」
倫子は高校時代の甘い記憶を掘り返し、旧姓で賢治の名前を呼んだ。二人の視線が絡む。着座した丸テーブルでは隣に座った。テーブルクロスの下で互いの脚を擦り合わせ、倫子の手は賢治の太ももを味わうように撫でた。賢治の股間は熱を持った。
「倫子、上に部屋を取ってあるんだ」
「準備万端ね」
「当たり前だろう、倫子もこの為に同窓会の幹事になったんじゃないか?」
「お見通しね」
賢治は倫子の肩を抱くと慌ただしく、しみったれた同窓会会場を後にした。エレベーターの箱に乗り込むなり、二人は唇を貪り合い、賢治の手のひらは豊かな胸を揉みしだいた。
「ダメよ、部屋まで我慢して」
「我慢できないよ、もう、もう」
「相変わらず…大きいのね」
倫子は赤い唇で舌なめずりをした。その淫靡な仕草に、賢治の背中に快感が駆け上がった。
ホテルの高層階。窓の外にはネオンの海が広がり、部屋の中は柔らかな照明に包まれている。賢治はソファに腰掛け、グラスの中のウイスキーを揺らす。スーツのネクタイを緩め、彼の視線はドアに向かう。バスルームから如月倫子が現れるのを待っているのだ。数年ぶりの再会。かつての恋人だった彼女との、許されざる逢瀬は興奮を誘った。
ドアが静かに開き、倫子が姿を現した。裸体を惜しげも無く曝け出し、妖しく微笑んでいる。豊かな胸、長い髪が肩に流れる。賢治の心臓が高鳴った。
「賢治はシャワーは浴びないの?」
倫子が囁く。声は甘く、記憶を呼び覚ます。
「もう、我慢出来ない」
賢治は立ち上がり、彼女に近づく。
「倫子・・・変わらないな」
賢治の手がそっと彼女の頬に触れる。その瞬間、時間は過去に戻ったかのようだった。二人は言葉を交わさず、互いの存在を確かめるように見つめ合う。倫子の瞳は揺れ、賢治の指先は彼女の首筋をなぞる。部屋に流れる静寂を破るのは、二人のかすかな息遣いだけ。
倫子の唇が微かに開き、賢治は我慢できずその唇を奪う。熱い口づけは、抑えていた欲望を解き放つ鍵となる。倫子は賢治の胸に手を置き、彼のシャツのボタンを外していく。ベルトを外す音、なすがままの賢治は期待に震えた。
賢治の視線は彼女の身体を愛でるように這う。「綺麗だ」と彼が呟くと、倫子はその唇に貪りついた。ベッドに倒れ込む二人。賢治の唇は倫子の首筋から鎖骨へ、そしてさらに下へと滑る。倫子の吐息が部屋に響き、彼女の指が賢治の背中に爪を立てる。絡め合う脚、互いの体温、鼓動、囁きだけが世界の全てとなる。倫子が賢治の名を呼ぶ声は、甘く切なく、禁断の果実のように賢治を狂わせた。
「賢治…会いたかった」
「会えて嬉しいよ」
賢治と倫子は深く繋がり、過去と現在が交錯する。賢治は倫子の膝を抱え上げると激しく出し入れした。その度に倫子は呻き声をあげ、両足を賢治に絡み付けた。ベッドのスプリングが軋む音が続く。賢治は倫子との痴態に酔いしれ、それ以来、毎週金曜日になるとこのホテルの一室で激しく体を求め合った。
「賢治、奥さんとはうまくいっているの?」
「…いや」
如月倫子はニヤリと口元を歪めた。
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