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由天。
47話 最終確認の手
午後。
名前をおしとやかに呼ぶ声とノック音。
玄関に立っていた女性は、
背は高くない。
肩幅は狭め。
姿勢はまっすぐ。
服は動きやすそうで、
袖口はきれい。
靴はよく手入れされている。
名乗りは短い。
声は低すぎず、
速くもない。
リカは、
廊下の端から見ている。
髪は肩より少し上。
家用の服のまま。
居間。
壁の横。
家庭向けスポットカレンダー機構。
その人は、
端末を取り出す。
指は細く、
動きに迷いがない。
画面を一つずつ確認。
数字。
切り替わり。
間。
「少しだけ」
そう言って、
時間の進み方を触る。
リカは息を止める。
「これで大丈夫です」
声は変わらない。
最後に、
一歩下がる。
両手をそろえる。
深く、
静かに、
お辞儀。
扉が閉まる。
音は小さい。
カレンダー機構は、
何も変わらない。
でも、
部屋の時間は、
きちんと進みはじめる。
リカは、
もう一度、
画面を見る。
当たり前が、
ちゃんと、
そこにあった。