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「不動産屋の中込と申します。よろしくお願いします」
「柚木しおりです。今日はよろしくお願いします」
恭介の提案で、私たちは不動産屋に赴いた。
長年の夢だったフリースクールを叶えるために物件を探していたが、素人ではどうしても行き詰まってしまった。そのため、専門である不動産屋に相談しようとなった。
「ご提案されていた内容は、土地が広く、自然が近いところというものでお間違いないですか?」
「はい、大丈夫です」
「何かほかに追加したい、という条件などがありましたら、遠慮せずお申し付けください」
「これでだいじょ」
「本当に?」
言葉を恭介に遮られ、戸惑う。恭介の顔を見ると、怪しいものを見る顔をしていた。
「ちゃんとした所選ばないと後々後悔するかもよ?」
「そうですとも。お客様のニーズに応えるのが私どもの役目。遠慮せずにおっしゃってください」
恭介の熱弁に加わるように、中込さんも私を説得する。考えに考えた末、私の理想を言うことにした。
迷惑だと思われると思っていたが、中込さんは何度も頷いて、良いですねと言ってくれた。そのおかげで、私の理想としていたものがよりはっきりと形になり、その代わりにその難しさを突きつけられた。
「これらの条件で3000万でしたらお安いものですよ。早速内見に行きましょう」
「「はやっ!?」」
中込さんの仕事のスピードに思わず私と恭介の声が重なった。
初夏の風が吹き、髪がなびく。辺りを見回すと、程よい自然が広がっていることが一目でわかった。
「ここです」
中込さんの見る方向に視線を向けると、広い庭の先に横に広い風情のある家が建っていた。縁側があるのか、家の横側に広い屋根が伸びていた。庭には松の木や畑だった場所と思われる場所があり、その正面に大きな倉庫があった。
「あの倉庫は…」
「あちらは昔農作業の重機を入れていた場所ですね。穴が空いていて風や雨をしのげないので、一旦全壊したほうが良いと思われますが…」
「ならコンテナを建てよう」
恭介の口から出たコンテナ、という聞きなれない単語に首を傾げる。すると恭介が説明してくれた。
「コンテナは要するに、1部屋のサイズの家みたいな。中古なら20万で買えるし、ふたつを繋げることもできる」
説明を聞き終えた後、もう一度周りを見渡す。
「ここにします」
「まだ他にも物件はありますが…」
「何も急かしてるわけじゃないんだ。しっかり見比べても…」
「私、ここが気に入りました」
そう言いながら、もう一度建物に目を向ける。程よい自然と日当たり。コンテナを買ったり、リフォームしたりとすることはまだまだ出てくるけどこれ以上いい物件は無い。
「では早速戻って、契約の方を…」
私の夢が1歩進んだ気がする