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#読み切り
不動産屋の中込さんと物件を内見し、即決。その後契約をした私は今…。
「よっこらせ…」
家の掃除をしている。
「あぁ〜”ぢがれだぁ」
「お疲れさま。しおり」
お茶のペットボトルを差し出す恭介を見上げる。ありがとうといいながらそれをうけとった。
「ごめんね、手伝えなくて」
「いや、逆に今まで物件探し手伝わせちゃったし、自分でやった方がいいことだから」
そう?といいながら恭介は辺りを見回す。それにつられて私も見回した。
朝からこの家に来て、掃き掃除をしたり拭き掃除をしたり、壊れていたものを直したりと重労働をこなしていた。
「これを1人で…すごいなぁしおりは」
「体力だけは自信があるんだ。家の中を早く仕上げて、ここに移り住めるようにしたいの」
「そっか。家とフリースクールを併用するんだったね」
恭介の言った通り、私はここにいずれ引っ越す。
今は恭介と意見が一致して一緒に住んでいるけど、いつかは1人で暮らしたいと思っていたのだ。見学に行ったフリースクールも、家の一室をスクール用にしている場所だった。それが印象的で、そうしたいと思ったのだ。
「とりあえず2階は掃除が終わったの。あとは1階の障子を張り替えて、お風呂とキッチンもしっかり洗わないと」
「何も、今日全部しないといけない訳じゃないだろ?少しずつ進めれば…」
「それだと9月に間に合わない」
9月になにかあるの?と恭介が聞いてきた。
9月は1番自殺が多い月なのだ。五月病と似ていて、長い休みが明けて学校や会社に行くことに憂鬱だと思ってしまう。また、行事が盛んな時期になり、ストレスが貯まりやすいのだ。
「へぇ…」
「心の拠り所になれる場所を早く作ってあげたいの」
「俺も手伝える時があったら行くよ」
「ありがとう」
その後、恭介は仕事があるからと戻って行った。私は少し休憩した後、作業を再開した。
一階には荷物が散乱していた。前の住居人が置いていったものだろうと中込さんは言っていた。処分してもいいけど、使えるものは使いたい。1番目に止まっていたのはこのグランドピアノだ。
「すっごい…調律は合ってないけど、これ、防音室作ってそこに入れたいな」
音楽にはヒーリング効果がある。心を癒すことも、感情を高ぶらせることもできる。もし子供の中でピアノが好きだと言う子がいたら弾かせてあげたいと考えていた。
「でも、防音室を作るってなったらすごい費用がかかるよね…自作できないかな」
泣いたり怒ったりという感情を発散させるためにも防音室は作ろうと思っていた。自作できたらそれはそれでいいが、しっかり作ってあげないと感情は外に出せない。安心感がないからだ。
「やっぱここにはお金をかけるべきか…ここは500万で買えたんだし」
中込さんのおかげで、思っていたよりも物件にお金をかけずに済んだ。かける所にはかけていかないと後々後悔してしまう。
私のプロジェクトが進行しようとしていた
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