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教室の隅。もしも3人が5歳のころに出会っていたら――そんな「もしもの話し」を始めた。
蓮司「俺、ぜってー走り回って先生に怒られてるな。『れんじくん、また廊下走っちゃダメでしょ!』って」
日下部「……うん。容易に想像できる」
蓮司「で、日下部は教室の隅っこで折り紙とかしてんだろ? なんか几帳面そうだし」
日下部「……別に几帳面じゃない」
蓮司「いや、5歳のときから絶対几帳面だって。ハサミで紙切っても線からズレないタイプ」
日下部「……ズレるよ」
蓮司「ズレないズレない。で、遥は?」
遥「……」
蓮司「おーい、幼児設定だぞ。5歳のお前、何してる?」
遥「……わかんね。あんま……喋んね」
日下部「……幼稚園で、黙ってる子?」
遥「……かも」
蓮司「おいおい、せっかく5歳児ごっこしてんのに暗ぇな。もっと“粘土で泥団子作ってます”とか言えよ」
遥「……団子、うまく作れなかったら、捨てられる」
日下部「……誰に」
遥「……」
蓮司「おい……」
日下部「……でもさ。粘土なんて、形バラバラでもいいんだ」
蓮司「そうそう! 俺なんか絶対、粘土を剣にして戦ってるタイプだし。泥団子なんて一発で爆発させる」
遥「……爆発したら、先生来んだろ」
蓮司「うん。で、また怒られる」
日下部「……そして反省文」
蓮司「5歳児が反省文は書かねーよ!」
3人で笑う。遥の顔にも少しだけ笑みが浮かぶ。
蓮司「でもなー、5歳の俺らが同じクラスにいたら、絶対おもしれーよな」
日下部「……俺は静かにしてたい」
蓮司「無理だろ。俺と遥が隣にいたら」
遥「……俺、そんな騒がねーし」
蓮司「いやでも、子どものお前、たぶん本気で走ったらめちゃ速いと思うんだよな。足逃げ用っていうか」
遥「……逃げ用?」
蓮司「ほら、先生に怒られたら逃げるしかねーし!」
日下部「……その時点で怒られるの前提なのか」
蓮司「うるせー。俺が先生に『れんじくん、落ち着いて!』って追いかけられて、日下部は隅っこで観察、遥は……」
遥「……一緒に逃げる?」
蓮司「それ! それだわ! お前も俺と一緒に逃げてんだよ」
日下部「……俺は追われる側じゃなく、逃げてるお前らを見てる」
蓮司「いや、たぶん先生に『くさかべくん、止めて!』って巻き込まれてる」
日下部「……やだ」
蓮司「5歳児にやだって言われてもな!」
ふと遥が、ぽつりとこぼした。
遥「……でもさ。俺、たぶん“友達”ってよくわかんね」
蓮司「お?」
日下部「……」
遥「小さいときから……怒られてばっかで。友達……って言っても、なんか信用できねーっていうか……」
少しうつむいたまま黙る遥。
けれど蓮司がすぐに言葉をかぶせた。
蓮司「じゃあ今ここに、俺と日下部がいて、3人で喋ってんのは何?」
遥「……わかんね」
日下部「……でも、少なくとも“怒られる時間”じゃない」
蓮司「だな。だからこれは“友達タイム”ってことでいいじゃん」
遥「……勝手に決めんな」
蓮司「勝手に決めてくんのが友達だろ。俺の中ではもうそう」
日下部「……お前の中だけだろ」
蓮司「いいじゃん、俺はこれで満足だし」
遥はしばらく黙っていたけれど、小さく「……ふーん」と言って、それ以上否定しなかった。
たとえ5歳に戻っても、3人の関係はやっぱりこんなふうに続いていくのだろう。
少し騒がしくて、ちょっと不器用で、それでも“地獄”とは違う時間。
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ロペ
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