「えらく素直に聞いてきよるな。それだけ必死ということかの。私たちも救ってもらったのだ、力を合わせればどうにか出来よう」
面倒ごとに巻き込まれたとばかり思っていたが、これは案外良かったのかもしれない。
「まあ、それでもあの呪いの発動を無しには出来なかろうよ。そこで、だ。あの呪いをこの精霊界で引き受けようと言うのがこちらの提案よ」
「身代わりになるという事か?」
「そう。とはいえ気にする事はないよの。ここはそもそもそういうところだからね。私たちもそれを食糧にさせてもらうよの。問題はどうやってそれを可能とするか、かな」
「それは俺にしたのと同じに引き込む事ではダメなのか?」
「1人を引き込むのと、王国の国土丸ごと引き込むのでは訳が違うよの。まず表で発動するのを抑えること。これは呪いの術式に魔術が供給されるのを防がないとダメよの。そしてこちらに引き込むのは、お主の世界からすればいわゆる封印になる。それをするのには4ヶ所。封印の守り人が必要よの」
幼女はどこからか持ってこられたピーチパフェを食べながら解決策を提案してくる。というより、可能と言うのならばそれで決定となるだろう。俺自身にはその案が何も無いのだから。
「守り人……封印の術者では無いのだな。封印をするのは別に居るという事か」
「それはお主よの」
「俺にはそんなスキルはないぞ?」
まさか実行不可能な妄想だったか?
「スキルは──この世界において実に便利よの。殆どの者はスキルの概念も知らない。何故だかいつの間にか出来る様になっていた、と言うくらいで。お主たちはスキルが芽生えた事、使える事、使えば普通ならあれやこれやと考えてやらなけれぼ出来ない事ができてしまう事を知っておる。つまり、スキルなしに何かをしようとすれば色々考えなくては出来ない。逆に言うとスキルが無くとも考えてやれば出来る、という事よの」
「そのやり方をお前は知っている、と?」
「もちろんよの。そしてそれを可能にするのはお主くらいの規格外でないと不可能よの」
俺なら出来る。封印、それが叶えばみんなを守れる。だがエミールは……。
「直接の被害を受けて今も死にそうな哀れな子どもも封印されるよの」
「──なぜ考えている事が分かった?」
「ここはそういうところよの。強く思った事は相手に伝わってしまう事もある。ひとのことを幼女、幼女と……これはお主が私の中からよくないものをごっそり抜いてくれたから起きたアンチエイジングよの。別に幼女ではないよの」
「──心が読まれるのは分かった。あまりいい気分ではないが。ならもうやる事は分かっているはずだ」
「そう。お主は守り人を用意してくるよの。私は準備しておくのでな。そうだ、守り人のうち1人は私の方で用意するよの」
「その守り人とやらも普通のヒトでは駄目なのだろう?選定の条件もあるはずだ」
幼女に俺の分らしきピーチパフェを差し出すと嬉しそうに受け取った。やはりただの幼女ではないか。
その幼女は王国の略図を描き出して
「ここと、ここと、ここよの。まあ、条件はあるにはあるのだが……のぅ。先に封印のやり方を教えておこう。ほれ、頭を出してみよ」
「こうか?」
俺がテーブル越しに差し出した頭に幼女はその額を当てて、直接送り込んでくる。
「伝わったかの?」
「──まあ、ただの幼女では無い事は分かった」
何かわからんが腕を振ってプリプリしているが、知らん。
「では俺は一旦出てその守り人を用意する。だがいいのか? ここに自由に入れるようにしたというのは」
「構わんよの。これからもちょくちょく来てやって欲しい事があるからの」
「それもそうか」
俺は頭から頭に伝えられたことを思い返して面倒とは思ったが、それ以上にこれで解決出来るならと安堵もしていた。
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