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第26話:異色をつなぐ波
合同訓練最終日、アリーナの中央には半透明の高壁が立っていた。
ルールは単純——制限時間内に壁の向こうの“核”を破壊すること。
ただし、壁は二種類以上の波が同時に干渉しない限り壊れない仕組みだ。
黄波代表の拓真は、今回ペアを組む相手を見て少し眉を上げた。
青緑の長髪を後ろで束ねた長身の青年・翠川(すいかわ)。
瞳は深い翡翠色で、波は常に涼やかな水色寄りの緑を保っている。
——俺とは波色が遠すぎる。
「緑と橙じゃ、同期は難しいぞ」
翠川は静かに言った。
「でも、あんたはできると思う。昨日の橙同期、見てたから」
試合開始。
壁の向こう側には、紅波と紫波のコンビが待ち受けていた。
彼らの波は激しく交わり、壁を揺らしながらも押し返してくる。
拓真は翠川の緑波に自分の橙波を重ねようとするが、波長が合わず干渉が乱れる。
まるで異なるリズムの曲を無理やり重ねたような不協和音——。
その隙に紅波が押し寄せ、拓真は一歩下がった。
「波の色を変えろ」
翠川の低い声が響く。
「お前は感情で波を動かせる。緑に寄せてみろ」
拓真は深呼吸し、怒りも焦りも抑え、心拍を落ち着ける。
橙が徐々に薄まり、緑へと近づく。
その瞬間、二人の波がぴたりと重なり、壁の表面が小さく揺れた。
「今だ!」
同時に波を赤寄りへ一気に引き上げる。
緑から橙、そして橙から赤へ——二色の干渉が高壁を貫き、破片が光の粒となって舞った。
観測パネルが勝利を告げる。
翠川は軽く頷き、髪を束ね直した。
「色を寄せるのは信頼が必要だ。今日、お前はそれをやった」
拓真は肩で息をしながらも、胸の奥に確かな手応えを感じていた。
——波の濃さや強さだけじゃない。色さえ超えれば、もっと強くなれる。
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