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「初めまして、私はリエ。あそこでサナギみたいになっているのがトマスで、私たちもドワーフです」
そう言って視線を3人の間でさまよわせながら、静かな挨拶を返してくれる。
「皆さんは一体どういう要件でこちらに……?」
尤もな疑問だ。彼女らは用事があってここにいるわけでもなく、この3人と面識があるわけでもない。それなら要件など坑道の一件でしかないが、聞いておかなければ話も出来はしまい。
「実はこちらの友人がギルド職員の1人でして、鍛冶屋としてドワーフの方々の世話になっている身として私と共にお見舞いに伺おうと言うことで、その時懇意にしているこちらのバルゾイも一緒にとこうして参りました次第です」
友人と言われて感激に震えるデカブツ。謎のドワーフ。そして丁寧な言葉遣いの中年くらいのヒト。
変わった組み合わせではあるが、姉としてはその好意は素直にありがたく、見舞いの品であるフルーツの盛り合わせを受け取り、部屋へと招き入れた。
「何か私たちに出来る事があれば良いのですが」
「いえ……。弟はあんな感じで、すみません」
ベッドの上のサナギは羽化する様子を見せない。
「まだ、崩れた坑道を掘り出すのは難航していて。そんなに深くはないところらしいのですが、掘ったそばから崩れるらしくって……」
そう言って落胆の色を隠せないリエ。バルゾイはサナギを見ている。どうやらあちらのようだとダリルは考え、ならとりあえずはこのサナギを羽化させなければ次へ進めないということだろうと思案する。
「まあ、そう言うことなら俺っちとこの街最強の巨人に任せてくれりゃすぐにでも掘り出せるわなっ‼︎」
バルゾイが厚い胸板を叩いてそう言い切る。デカブツには拒否権はなさそうで、明日からの休暇届の言い訳を考え始めた。けどその顔はまるで役に立てる事が嬉しいといった明るいものである。
「最強だって⁉︎ それも巨人⁉︎ うおっ? でっけええっ! 姉ちゃん、この人なら大丈夫かもしんねえっ! 何座ってんだよ、早くっ! 早く行こうぜっ!」
ドワーフは分かりやすい。やる時はやる、やらない時はやらない。やらない時は立ち止まってしまっても、やれるとなれば走り出すのだ。