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ひより
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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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#大人ロマンス
瑠璃マリコ
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重田💋(omoda)
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三十分程車を走らせると閑静な住宅街へ入り、朝陽は一軒の住宅の前で車を停めた。
「ほら、着いたよ」
「……はいはい、どーも」
陽向は不貞腐れたままシートベルトを外すと車を降りていき、振り返ることもなくそのまま家の中へ入っていってしまう。
閉まった玄関を見つめた朝陽は小さく溜め息をついた。
「……すみません、弟が色々と失礼なことを」
「ううん、それは全然。でも、本当に良かったの? 陽向くん、まだ怒ってるみたいだったけど……」
亜佑美が心配そうに尋ねると朝陽は苦笑を浮かべながらエンジンをかけ直し、
「大丈夫です。あれも、いつものことですから」
そう言って車をゆっくり発進させた。
再び住宅街を抜ける道を走りながら朝陽はぽつりと口を開いた。
「陽向とは歳が離れているし母親も居なかったから、少しくらいの我が侭なら仕方ないって思っていました。そんな風に甘やかしてしまった結果、あんな我が侭な性格になってしまって……」
「そんな……全部が朝陽くんのせいじゃないよ」
亜佑美の言葉に朝陽は小さく首を振り、苦笑した。
「それでも、兄として責任は感じています」
一拍置いてから朝陽は照れ隠しをするように視線を前へ向けたまま続ける。
「……それに、実は……少しだけ、陽向が羨ましいんです」
「羨ましい?」
「ええ。陽向は背も高いし自分の意思をはっきり言える。人との距離の縮め方も上手くて異性にもよくモテるんです」
そして自虐気味に笑った朝陽は、
「俺には、ああいうところが全然なくて。昔から密かにコンプレックスだったんですよ」
胸の内に秘めた思いを口にした。
それを聞いた亜佑美は意外そうに目を丸くした。
いつも穏やかで誠実な彼が、そんな劣等感を抱えているとは思ってもみなかったからだ。
「私は……そうは思わないけどな」
その一言に朝陽は少し驚いたように亜佑美へ視線を向ける。
「朝陽くんにだって素敵なところが沢山あるもの、比べることなんて無いよ」
優しく微笑む亜佑美の言葉に朝陽の表情は少しだけ和らいでいた。
朝陽は照れ隠しのように頬を掻きながら小さく笑うと、
「その……例えば、どんなところっていうのを聞いてもいいですか?」
恐る恐る尋ねた。
その姿が可愛くて、亜佑美はふっと頬を緩めた。
「もちろん」
そして、少しだけ考えるように視線を上へ向けると一つ一つ思い浮かべるように口を開く。
「まず、すごく優しいところ。困っている人を放っておけないし、誰に対しても誠実に向き合うでしょう?」
「それは……当たり前のことですよ」
「ううん。当たり前じゃないよ」
亜佑美はゆっくりと首を横に振る。
「そういうのって分かっててもなかなか出来ることじゃない。それに、ちゃんと相手の気持ちを考えて言葉を選んでくれるところでしょ、それから真面目で努力家なところに、自分のことより周りを優先しちゃうくらい責任感が強いところとか……挙げたらキリがないかも」
「そんなにですか」
「うん。だから私は朝陽くんが誰かと比べて劣っているなんて一度も思ったことないよ」
真っ直ぐ向けられる言葉にはお世辞も慰めもなく、心からそう思っていることだけが伝わってくる。
その言葉が胸の奥へじんわりと染み渡り、朝陽の表情は自然と綻んでいく。
「……ありがとうございます。亜佑美さんに言われたから、もう悩みません。これからは自信を持とうと思います」
吹っ切れたように笑う朝陽見て亜佑美も嬉しそうに笑みを返す。
「うん。その方が絶対にいいよ」
二人は穏やかに言葉を交わしながらマンションへと戻っていった。
部屋へ着き、後から入った亜佑美が扉を閉めた、その瞬間だった。
ふわりと背中に温もりが重なるのを感じた亜佑美は、
「あ、朝陽、くん?」
突然、後ろから抱きしめられたことに驚いて目を見開き、問いかけるように朝陽の名前を呼んだ。
すると朝陽は腕にほんの少しだけ力を込め、そのまま亜佑美の耳元へ顔を寄せ、
「……早く、こうしたかったです」
「ーーッ!」
低く穏やかな囁きが亜佑美の鼓動を高鳴らせた。
頬がみるみる熱を帯びていくのを感じながらも亜佑美は身じろぎ一つ出来ず、朝陽の腕の中で静かに息を呑んだ。
コメント
1件
朝陽くんの本音が聞けた回だったね。陽向くんへの劣等感って、ずっと心の中にしまってたんだろうな……優しい人ほど自分のこと低く見ちゃうの、すごく分かる。亜佑美さんが「当たり前じゃない」って真っ直ぐ肯定してくれたのが沁みた。そして最後の抱きしめ……「早く、こうしたかった」は朝陽くんらしい不器用な素直さで、急にドキドキしたよ。続きすごく気になる。