TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

その頃俳優の大和翔真はテレビ局での打ち合わせを終えて迎えに来たマネージャーの車へ向かっていた。


今日は北穂高アタックの番組の打ち合わせだった。

山に精通しているベテランスタッフや山岳コーディネーターを交えて説明や話し合いが行われた。

3月の北穂高はまだ本格的な冬だ。

一歩間違えると人命にかかわる事故も起こりかねないので集まったメンバーは真剣に打ち合わせをした。


翔真が車へ乗り込むとマネージャーの鈴木が声をかける。


「それにしても今朝のワイドショー凄かったな。『mountain top7』の西村が槍玉に挙げられていてびっくりしたよ」


鈴木は驚いたように言うと車を発進させる。

そんな鈴木に対し翔真はスマホをいじりながら言った。


「不倫なんて今時流行んないよね。やっぱり人の道に外れた生き方をすると天罰が下るんだな」

「翔真まさかおやじさんに何か頼んだんじゃないか?」


しかし翔真は窓の外を見るとフフッと笑うだけだった


「お前のおやじさんは大手商社の取締役、そんで叔父さんは有名な国会議員だろう? デビューする時コネは使いたくないからってお前はその事をずっと隠して自分の実力だけでここまで来たんだ。それは凄い事だし俺はお前を尊敬しているよ。だけどまさか今そのコネクションを使うとはなー、恐れ入ったよ」


「フフッ、俺はただ卑怯な奴が嫌いなだけだよ。悪い事をする奴には誰かがお灸をすえないとだし」


翔真は窓の外を見つめたままニヤッと笑った。

そんな翔真を見て鈴木は愉快そうに声を出して笑った。



その頃岳大は久しぶりに山神山荘へ向かっていた。最近は室内での筋トレばかりをしていたので久しぶりに外を歩く。

岳大の家から山神山荘まではちょうどいいウォーキングコースだった。


山荘に到着すると岳大は玄関を入る。するとちょうどフロントに優羽がいた。


「お疲れ様。仕事は順調?」


岳大が山荘に入って来たので優羽は顔を上げてびっくりしている。


「珍しいですね。歩きでここまで?」

「うん、トレーニングを兼ねてね」

「あ、そうでしたね。登山に向けての体力作り?」


優羽は思いがけず岳大に会えて嬉しそうだ。


「コーヒーをもらおうかな?」


岳大はそう言って奥のカフェに入って行ったので優羽も後を追う。

そしてブレンドの準備をした。


岳大は窓際の席に座ると外の景色を眺めていた。

そんな岳大の横顔を見つめながら優羽は二人がまだ出会ったばかりの頃このカフェでよくお喋りをしていた事を思い出す。

あれからまだそれほど経っていないのにはるか昔の事のように思えるから不思議だ。


コーヒーの準備が整うと優羽はケーキの外注先である洋菓子店から試供品としてもらったマドレーヌをコーヒーと共に岳大に持って行った。


「サービスです。最近頭ばかり使って糖分が不足しているでしょう?」


最近の岳大は経営コンサルタントや税理士から送られてくる経営に関する書類とにらめっこをする日々が増えていた。それに加え写真の仕事でパソコンの前から離れられない日々が続いていたので優羽は甘い物でリラックスしてもらおうと思った。


「ありがとう。ちょうど甘いものが欲しかったから嬉しいよ」


岳大が早速マドレーヌを食べ始めたので優羽は向かい側の椅子に腰を下ろした。

そして西村の事を話そうと口を開いた。


「朝のワイドショー見た? びっくりしちゃった」


岳大は自分から話そうと思っていたのに先に優羽が話してきたので驚く。


「うん、井上君が先に気付いてテレビをつけてくれたので二人で見たよ」

「もしかして私の事を心配して来てくれたの?」

「それは口実で本当は優羽に会いたかったから来た」


その言葉に優羽の頬が赤く染まる。

その時岳大の大きな手のひらが赤く染まった頬に優しく触れた。


「毎晩優羽の事を思い出してる」


岳大は優しく囁くように言った。

すると優羽はさらに照れた様子で頬をプクッと膨らませる。その頬を岳大の指がつんと突くと二人の笑い声がカフェに響く。

それから優羽はニッコリと微笑んで言った。


「私はもう大丈夫です。過ぎ去った事は忘れてこれからは未来だけを見るつもり」


岳大は強い意思を帯びた揺るぎない優羽の瞳を見つめるとうんと頷く。そして優羽の頭をポンポンと優しく撫でた。


あの日の旅行を境に二人は愛し合う真の恋人同士として自然に向き合えるようになっていた。

岳大は以前にも増して優羽を大切に思い優羽も岳大の事を心から信頼している。

そんな二人の間に流れる空気はとても優しく穏やかで沢山の思いやりに溢れていた。


その時山岸夫妻がカフェに入って来た。久しぶりに岳大が山荘に顔を出したので二人は喜びそこからは賑やかなお喋りが始まる。

夫妻は岳大が大和翔真と共演するドキュメンタリー番組の事やライバル会社の不倫騒動、そして新しい店舗の事など聞きたい事が山ほどあったようで岳大にしきりに質問をしていた。

優羽は夫妻にコーヒーを出し終えるとフロントへ戻った。

時折カフェから漏れてくる楽しそうな笑い声をBGMに優羽は穏やかな笑みを浮かべたまま仕事を続けた。


優羽が何気なく窓の外に目をやると太陽の光が木々に残る雪を照らしキラキラと輝いている。


冬ももうすぐ終わる。

そしてこの町にも春がやって来る。

loading

この作品はいかがでしたか?

249

コメント

2

ユーザー

翔真くんは西村もびっくりのお坊っちゃまでした〜😆 心配してたけど、危害が加えられなくてほんとによかった。 翔真くんが動いたのは自分の為にだったけど、まわりまで救ってくれた🥹ありがとう😭 幸せいっぱいの2人💕羨ましいくらい愛し合ってるよね〜🫧🫧

ユーザー

北穂高アタックももうじき。このタイミングで西村の不倫騒動は翔真さんが仕掛けたんだね❗️確かに翔真さんの言い分は全くその通りです✨ そしてそのニュースを聞いた優羽ちゃんも過去を振り返らず未来だけを見つめる🌈と以前の優羽ちゃんとは真逆で愛された強さを心に秘めてる❤️ 素晴らしいよ〜優羽ちゃん✨😊💓 長かった冬⛄️も終わり間近で北穂高から帰ったらもう春になりますね🌸 あとは岳大さん達の登山の無事帰還を祈ります

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚