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#【推しの子】
#SAKAMOTODAYS
おとうふ 紹介文読んで🙇
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りな
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前回のストーリーにおける神城玲奈の独白・密会シーンについて、その「熱心なファン(トップオタク)」の名前を**高橋陽向(たかはし・ひなた)**と明記した形に訂正・リライトしました!玲奈が彼の「純粋な愛(狂信)」をどのように歪ませて毒を吹き込んだのか、高橋陽向の名を刻んで美裕視点から繋がる形で再構築しています。
(※神城玲奈視点)
夜のスタジオ裏の駐車場。街灯の光も届かない暗がりで、私は一人で待っていた。
カチャ、と小さな足音が近づいてくる。
現れたのは、汗ばんだ顔をフードで隠した背の高い男。
C小町の現場に通い詰めている美裕ちゃんの熱心なトップオタク——**高橋陽向(たかはし・ひなた)**だ。美裕ちゃんのためなら何十万もCDを積み、SNSでも「美裕ちゃんは僕たちの太陽でヒーローだ」と崇めている、純粋で扱いやすい「光の信者」。
「あ……神城さん……? ホントに来てくれたんだ……。DMで『美裕ちゃんのことで話がある』って言ってたのは……?」
高橋陽向の声は緊張で震えている。
私は無表情のまま、光の消えた瞳で陽向をじっと見つめた。そして、少しだけ眉をひそめ、今にも泣き出しそうな、可憐で悲劇的な少女の顔を作ってみせた。
「……うん。来てくれて、ありがとう、陽向さん。……本当はね、メンバーの私(玲奈)がこんなこと言っちゃいけないんだけど……もう、見ていられなくて」
「え……? 見ていられないって……美裕ちゃんに何かあったの!?」
陽向が身を乗り出してくる。
食いついた。やっぱり、美裕ちゃんを「神様」みたいに愛してる人間ほど、こういう話には弱い。
私はそっと胸に手を当て、弱々しい声で毒を注ぎ込み始めた。
「美裕ちゃんね……壊れかけてるの」
「え……っ!?」
「みんなの前では『ヒーロー』として笑ってるでショ? 2.5次元舞台も、映画も、原作者さんに褒められて……世間は美裕ちゃんを『完璧なアイドル』だって持ち上げてる。でも……楽屋の裏で、美裕ちゃんがどれだけ泣いてるか、誰も知らないの」
「美裕ちゃんが……泣いてる……?」
「うん。……美裕ちゃんね、自分の過去や性別のことを、大人たちに『ビジネス』として利用され続けてるの。本当はもう疲れ切ってて、アイドルなんてやめたいのに……黒岩Pや大人たちの期待のために、無理して『強い美裕』を演じさせられてるの」
高橋陽向の顔が、怒りとショックで歪んでいくのが分かった。
純粋なファンであればあるほど、自分の「推し」が裏で苦しんでいるという物語(嘘)に耐えられない。
私はさらに、陽向の耳元へ囁くように言葉を重ねた。
「美裕ちゃん、この前の撮影の後、私の前で崩れ落ちて言ったんだよ。……『誰か私を、この綺麗すぎる地獄から連れ去ってほしい』って」
「そんな……! 美裕ちゃんがそんな悲痛なことを……!!」
「ねぇ……陽向さん。あなた、美裕ちゃんのこと、誰よりも一番愛してるんでしょ?」
私は陽向の袖をギュッと掴み、縋りつくような潤んだ瞳で見上げた。
「大人は誰も美裕ちゃんを救ってくれない。C小町の他のメンバーも、美裕ちゃんの活躍に嫉妬してるだけ。……美裕ちゃんを救えるのは、美裕ちゃんの本当の苦しみを知って、命がけで守ろうとしてくれる……陽向さんみたいな『本当のファン』だけなの」
高橋陽向の瞳に、危険な正義感の火が灯った。
「救う」という言葉の甘美な毒に冒された、哀れな信者の顔。
「僕が……僕が高橋陽向が、美裕ちゃんを救わなきゃ……! あの悪質な大人たちから、この残酷な芸能界から……美裕ちゃんを連れ去ってみせる……!」
「うん……。美裕ちゃんを、連れ去ってあげてね。誰も届かない、静かな場所へ……」
高橋陽向が握りしめた拳を見送りながら、私は暗闇の中で一人、静かに笑った。
(……あはっ。ふふふっ……)
可憐な少女の仮面が剥がれ落ち、私の口元が歪に吊り上がっていく。
ねぇ、美裕ちゃん。
あなたが作った「信者」の高橋陽向が、あなたを愛するあまり、あなたを閉じ込めようとしてるよ。
あなたが光になればなるほど、ファンは狂っていく。
あなたがヒーローになればなるほど、その足元にはドロドロした狂愛が溜まっていくの。
私は何もしてないよ?
ただ、高橋陽向に「本当のこと(嘘)」を教えてあげただけ。
(待っててね、美裕ちゃん)
高橋陽向が起こす「事件」によって、あなたが信じたファンとの絆が崩れ去る。
そして、すべてに絶望して泣き崩れたあなたを、最後に優しく抱きしめてあげるのは……この私なんだから。
『月華のアルテミス』の撮影も佳境を迎え、私は映画のクライマックスシーンのロケで、地方の古い洋館にいた。
撮影の合間、楽屋として借りていた控え室の窓から外を眺めていると、遠くのフェンス沿いに一人の男の姿が見えた。
フードを深くかぶり、必死な眼差しでこちらを見つめている男。
——高橋陽向だ。
(高橋さん……また来てる)
C小町の初期からイベントに通い詰めてくれ、いつだって最前列で純粋な笑顔を向けてくれていた熱心なファン。だが、ここ最近の彼の様子はおかしかった。SNSでの書き込みはどこか悲壮感を帯び「僕が美裕ちゃんを救う」「大人たちの思い通りにはさせない」といった異様なメッセージが増えていたのだ。
「美裕、冷たいお茶持ってきたぞ」
ドアが開いて康弘が入ってきた。手渡されたお茶を一口飲みながら、私は意を決して康弘に尋ねた。
「康弘……高橋陽向さんのこと、何か知ってる?」
康弘の手が一瞬止まり、表情が険しくなった。
「……やっぱり気づいてたか。最近、お前のソロの仕事場に必ず現れる。警備を強めてはいるんだが……あいつの目、少しヤバい。ファンとしての熱量を超えて、何か『使命感』みたいなものに憑りつかれてる顔だ」
「使命感……?」
「ああ。まるで『捕らわれの姫を救い出す騎士』気取りだ。……まあ、お前が映画や舞台でどんどん遠い存在になっていく焦りもあるんだろうが」
康弘はそこで言葉を切り、苦々しそうに吐き捨てた。
「……いや、それだけじゃないな。あいつのあの異常な張り切りよう、絶対に誰かが『煽って』いる。……神城玲奈だ」
胸の奥が、冷たく冷えた。
(玲奈ちゃんが……高橋さんを……?)
康弘が言っていた言葉が脳裏をよぎる。
『あいつは自分を愛してくれる光を、自分の手でドロドロに壊すことでしか愛を実感できない』
玲奈ちゃんは、私を一番純粋に愛してくれていたファンである高橋さんを利用して、私の足元を崩そうとしているんだ。
「美裕、次の現場からは警備員を倍にする。高橋にも出禁処置を——」
「待って、康弘」
私は康弘の言葉を遮り、窓の外をもう一度見つめた。
「逃げるだけじゃダメなの。高橋さんは……私を応援してくれていた大切なファンだよ。もし高橋さんが道を踏み外しそうになってるなら……私はアイドルとして、ちゃんと向き合わなきゃいけない」
「美裕! お前正気か!? あいつはもう『ファン』の域を超えてるかもしれないんだぞ! 刺されたりでもしたらどうするんだ!」
康弘が珍しく声を荒げる。私を案じる兄としての悲鳴。
「大丈夫だよ、康弘」
私は自分の胸に手を当て、まっすぐに康弘の目を見つめた。
「私、トランスジェンダーとして生きるって決めた時、誰かに救ってもらうのを待つんじゃなくて、自分で自分を救うって決めたんだ。だから……高橋さんが歪んだ『救世主』になろうとしてるなら、私自身の言葉で目を覚まさせなきゃ意味がない」
前世の私がただの観客だった頃。
画面の向こうの推しが傷つき、ファンが暴走していくのを指をくわえて見ていることしかできなかった悔しさ。
でも今の私は違う。マイクを持ち、ステージに立ち、言葉を届ける力を持った「生きているアイドル」なんだ。
「……本当に、昔から博己の時から頑固だな、お前は」
康弘は頭を抱え、深くため息を吐いた。
「わかった。だが絶対に一人にはさせない。俺も黒岩Pも、警備もすぐ近くに控えさせる。……いいな?」
「うん、ありがとうお兄ちゃん」
その日のロケ撮影が終わり、控室へ戻る夕暮れの廊下。
薄暗い廊下の影から、意を決したようにひとりの男が飛び出してきた。
「——美裕ちゃん!!」
手に小さなナイフ……いや、壊れたペンライトの鋭い破片を握りしめた高橋陽向だった。
「高橋さん……」
私は足を止め、逃げずに彼と正面から向き合った。
高橋さんの目は血走り、全身がガタガタと震えている。
「大丈夫だから……! 僕が、僕が今……あの残酷な大人たちから、この汚い芸能界から、美裕ちゃんを救い出してあげるから!! 神城さんから聞いたよ……美裕ちゃんが本当は泣いてて、助けを求めてるって!!」
裏で糸を引いていた玲奈ちゃんの名前。
物陰から、黒髪を揺らして息を潜めて見守る玲奈ちゃんの気配を、私は肌で感じていた。
高橋さんは破片を突き出し、涙をボロボロとこぼしながら叫ぶ。
「僕と一緒に来てください! 誰も届かないところへ行こう! 美裕ちゃんを……僕の『ヒーロー』を、これ以上壊させない!!」
歪んだ愛と狂気。
だが、その根底にあるのは「私を救いたい」という、あまりにも痛々しく純粋なファン心だった。
私は一歩、彼に向かって踏み出した。
「美裕、危険だ!」影で見守っていた康弘が飛び出そうとするのを、私は手で制した。
「高橋さん」
私の声は、静かで、透き通るように廊下に響いた。
「私のために、そこまで苦しんでくれて……ありがとう」
「え……?」高橋さんの動きが止まる。
「でもね……私、泣いてなんかいないよ」
私は優しく、けれど絶対に揺らがない強い笑顔を高橋さんに向けた。
「大人たちに利用されてるわけでも、無理して演じてるわけでもない。私……自分の意思で、この『榊美裕』としてステージに立ってるの。性別の壁も、過去の傷も、全部背負って輝くって……私自身が決めたの」
「で、でも……神城さんが……美裕ちゃんは苦しんでるって……」
「苦しいよ。傷つくこともたくさんある。だけどね——」
私は自分の胸を強く張った。
「その苦しみすら全部歌に変えて、高橋さんやみんなに『夢』を見せるのが……私の大好きなアイドルの仕事なの。私を救ってくれるのは、誰かの手じゃない。ステージの上で輝く自分自身なの」
高橋さんの手が、ガタガタと激しく震え出す。
「高橋さん。私を『助けたい姫』にしないで。私はあなたたちの……C小町の、不屈のヒーローでいたいの」
高橋さんの目から、堰を切ったように涙があふれ出した。
握りしめていた破片が、カチャンと虚しい音を立てて床に落ちる。
「美裕……ちゃん……っ……僕、僕は……ただ……」
崩れ落ちる高橋さん。康弘と警備員たちが静かに駆け寄り、彼を支えた。高橋さんは自分の過ちに気づき、声を上げて泣いていた。
私は静かに目を閉じ、深く息を吐き出した。
そして——廊下の奥の暗闇へと視線を向けた。
そこには、計画を打ち砕かれ、信じられないものを見るような目で見つめる**神城玲奈**が立っていた。
光のない瞳が、激しいショックと混乱で揺れている。
(……ねぇ、玲奈ちゃん)
私は暗闇の中に立つ玲奈ちゃんに向かって、逃げずにまっすぐ歩み寄った。
「私のファンを巻き込むのは、もうやめて」
玲奈ちゃんは絶句し、一歩後退りした。
「私は壊れないよ、玲奈ちゃん。高橋さんの愛も、あなたの抱えるその深い暗闇も……全部私が受け止めて、ステージの上で光に変えてみせるから」
「……っ……ぁ……」
玲奈ちゃんは喉を鳴らし、掠れた声を漏らすと、逃げるように夜の闇の中へ走り去っていった。
高橋陽向の暴走事件は、未然に防がれた。
けれど、C小町の中に燻る「玲奈ちゃんの狂気」との決着は、まだついていない。
私は握りしめた拳に力を込めた。
映画『月華のアルテミス』の公開、そしてC小町の単独ライブが迫っている。
どんな闇が襲いかかろうと、私は絶対に倒れない。
前世の無念を晴らし、新しい時代を創るために——私は走り続ける。
コメント
1件
ああ、もうこのエピソード、胸がいっぱいになりました……。美裕ちゃんが「自分で自分を救う」って決めたあのシーン、本当に強くてかっこよかったです。高橋さんの歪んだ愛情に向き合って、逃げずに“ヒーローでいたい”って言い切るところ、涙が止まらなかったです。玲奈ちゃんの計画も一歩先を読まれていて、美裕ちゃんの覚悟が伝わってくる第19話でした。次が気になりすぎます……!