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父が新しい母親を連れて帰って来てみると
美知恵おばさんが言っていた事は
正しかったとわかった
美鈴はおばさんが当然出て行くものと
決めていて残酷な甘ったるい調子で
おばさんが出て行きたいというのを
自分はいやいや承知するのだというフリをした
そして父が名残惜しそうに
急いで出ていく必要はない
少なくとも後1~2か月は
ここで暮らすようにと言うと
美鈴はおだやかな調子でそれをさえぎった
「でも・・・あなた(はぁと)
あなたにはおわかりにならないのよ
美知恵さんはもう予定を立ててしまったのだし
早く新しい生活を始めたいと
思ってらっしゃるんですから・・・
私達のわがままを押しつけてはいけませんわ 」
そっと父の腕に手を添える
私と美知恵おばさんはダイニングテーブルの
向えに座り美鈴の宣戦布告をじっと
苦々しい思いで聞いている
「男の方にはそういう事はよく
お分かりにならないでしょうけど
私達の我儘を押し付けてはご迷惑よ・・・
ね・・・あなた・・・・」
そう言って美鈴は美知恵おばさんの方を見て
よく響く声で笑った
美知恵おばさんは思いがけないウィットを
きかせて、男の方にわからないことは
女の方に理解していただく他はありませんわね
と言った
美鈴はにっこりした、そしてあろうことか
美知恵おばさんはいつの間にか今週中に
我が家を出て行くことになった
美知恵おばさんは深く傷ついたまま
去って行った
まんまと美鈴に追い出される事になった
おばさんと別れる時私は泣いた
私の涙がおばさんのこらえた涙を誘い出した
その時になって初めて私はおばさんに
感謝することを知らず、優しい心を
持たなかったことに気付いて後悔した
若い継母に少年らしくすっかり魅せられていた
雄二でさえこの仕打ちを不当と感じた
しかしまたその一方で雄二は美鈴を
我が家の女神として迎えることを喜んでいた
当然のことかもしれないが
美鈴がこの家に来て始めたことは
まず母の個性がまだそこここに残っている
家の中の模様替えをすることだった
私はそれが許しがたいことのように思われた
母がこの家の窓に合わせて特注した
カーテンは全て外され
新しいぞっとするようなピンク色のカーテンに
毒々しい真っ赤な新しい冷蔵庫と
オーブンレンヂが届いた
美鈴はずっと赤い家電に囲まれて
暮らすのが夢だったと父に礼を言った
そして美鈴は母のイタリア製の家具も古臭いと
真っ白なニトリの何の装飾もない
安っぽい家具に新調し
そしていたる所に金縁の鏡を設置した
父はそんな美鈴の願いを何でも叶え
惜しみなく金を出した