コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
母屋はすべてが以前よりずっと綺麗で
華やかになったが、私は心の底から
その明るさを嫌った
少なくとも自分だけは喪の装いを続けようと思った
美鈴は雄二には常に優しくて
あれだけしつこくつきまとわれても
驚くほど寛大だった、雄二の仔犬のような
献身ぶりを面白がって見ていたのだと思う
どんな時でも嫌な顔をせず
雄二のサッカーの試合も観に行ったりもした
当時、雄二のサッカー観戦は
何時間も他の保護者に紛れて
ずっと立って観ていなくてはならず
私と美知恵おばさんには苦痛以外の
何ものでもなかった
雄二にとって美鈴は継母と言うより
素敵な年上の女性で間違いなく
雄二の初恋の人だった
美鈴はまた、意識的にやっているのか
どうかはわからないが父と息子の
信頼関係もバラバラにしてしまった
たとえば父がリビングに入ってくると
雄二が美鈴と二人で
何やら楽しそうに笑っている
途端に父は不機嫌になりきつい声で
雄二に宿題は終わったのかとか
部屋が汚いから掃除してこいと言いつける
雄二がさっと顔を不満そうに赤らめると
美鈴は黙って同情するように雄二の頬を撫でて
片方の目でチラリと父の嫉妬を満足そうに
観察しているのだ
美鈴は雄二を使って
父をじらしているのだろうと私は思った