テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
[9号の記録を開始]
現在:3918年5月10日22時00分
被検体:RCU-009/AD-3902
白衣の人がまた記録を取っている。他の子達も、おそらく私のようにたくさんこの大人たちに記録を取られていると思う。
「9号、君はヴェルタ防衛作戦へ向かうが、意気込みとかはあるかね?」
「ふぇぁ?!がっががが頑張りたいと思いますっ!!そそそそれだけですっ!!」
ひゃー!またへんな返ししちゃった!!私ったらいつもこんな返しで!!こんなことしてたらまた変に思われちゃう!!どうにかして普通にしないと!!
やばい不安になったらまた耳鳴りがしてきた。頭の中に虫の鳴き声みたいな気持ち悪い音が高音響かせてしつこくこびりついてくるんだー!!
「君は大人数の人を殺すのに躊躇いはないかね。」
「いっいいいい異星人の死なんてどうでもいいのですが!!つか正味どどどどどうでもいいんですよ!!」
「耳鳴りは最近どうかね。」
「かっ…変わりませんっ!!」
「聴力に問題なし。診断した結果西洋医学の観点でいけば君はただの異常者だ。あ、抗不安薬そろそろきれそうだったよね。はい、どうぞ。」
白衣さんから渡された。薬をくれるのはありがたい。これがあると耳鳴りがやむ。
この人は、私が使えるか使えないか意外見ていない。少しでも私が使える人間だって証明しないとこの人に嫌われちゃう。
「わわわわ私使えるように頑張ります!!」
「はい、頑張ってください。…誰に嫌われるとか気にしてはきりありませんよ。」
「…分かってます。」
[3918年5月11日9時20分/2号]
[ヴェルタ軍事基地から通信電波受信]
[承諾]
「はい、こちらRCU-002。」
『こちら軍務官の加賀田 岬みさきみさきだ。後方射撃を担当する。にしても、塹壕なんて今更古すぎるんじゃないか?』
「私たちは飛んだり長距離を攻撃できるわけではありません。資源を節約するために人間という資源を使うのは当然ではありませんか。」
今回の任務はヴェルタ防衛戦を守ること。106区から107区の間に広がるのがヴェルタ防衛戦。まぁ、これも大まかなんだけど。
ここヴェルタは敵にとっても大切な資源が眠る場所だから、こうした戦闘を起こしてまで手に入れたいのだろう。
『そうか。あと、ヤツらの技術力はこちらと同程度、またはそれ以下であることは折り込み済みだ。だが、奴らの恐ろしさは超人的な生命力と超能力とやらだ。』
「そうですね。ですが、ヤツらとて首を切れば簡単に死にます。超能力も、使える個体、使えない個体と別れている。気をつければいい。」
『そうだな。じゃあ、危険な時はこちらから放送する。指示に従うように。』
「はい。」
[通信終了]
ヴェルタ防衛戦。この作戦では、私たちはただの防衛戦を迫られる。まぁ、あわよくば敵の領土奪っちゃいたいなという思惑も隠れてるけど。
ヴェルタはとにかく蝕性雨が降らないかが心配どころ。こんな泥臭い戦場じゃ、どこも精神を削られるだろうに、さらに蝕性雨なんてきたらたまったもんじゃあない。
ヴェルタ防衛作戦なんて大規模な作戦いつぶりだろう。今回の任務は後方支援含め核体兵器は55人戦場送り。そのうえ、軍人まで雇ったそう。
まぁ、国家ぐるみの事だし、軍人も参加するのは自然なことだけれど。あとはまぁ戦場でよく見かける射撃兵器。
「2号敵陣営が動き始めた。」
「分かった。全員に知らせる。」
[隊全員への強制通信]
「こちらRCU-002。敵が動き出したとのこと。直ちに戦闘態勢を整え敵の襲撃に備えること。各自配置につくこと。」
[通信終了]
[通信フィルターオフモード]
塹壕の中にいる軍人は皆正気では無さそうだった。脅えて体がガタガタと震えている者、案外冷静な者、冷静な者にしがみついて怯える者。
「お、これが人間兵器ってやつか?こいつらほんとに戦えるか?ガキじゃねぇか」
「畤院!!失礼すぎるよ!!!」
男二人が私たちをまじまじと見る。3号は不快そうな顔をしている。ちっこい男と大柄で偉そうな男がまじまじと顔を眺める。
「失礼だね。私は君の首をいつでもはね飛ばせる。」
「ひぃぃい!!怒らせたらやばいんだって!!」
「はぁ、あなたなんなんですか?自分で申請して軍人になったんじゃないですか?なんでそんな怯えるのですか。」
「死にたくないからに決まってるじゃん!!大体こんなの入りたく無かったのに家が貧乏だから軍人になっていっぱい稼いでこいとかいうからぁぁ!!」
3号はムスッとしてる。軍人のくせにそんな泣いてて情けないと呟きながら小柄なひっぺり腰男を軽く蹴っている。3号は泣きじゃくる男に呆れているのか、情けないといってため息を着く。
確かに私は脅したけど、そんなこと最初からするつもりはないのに。ていうか、そんなことやってる場合でもない。
「同士討ちだけはしないでくださいね。仲間ひとりでも撃った撃ち殺しますよ?まぁ、標準アシストあるから別に大丈夫だと思いますが。」
別に本気で言った訳では無いがすごくビビられた。そんなにビビることないのに。
第一線塹壕から出ると約1km先から人影のようなものがゾロゾロと見える。あんな無防備にたくさんぞろぞろと集まるなんて爆撃されても平気な何かを持っているのだろうか。
「3号、向こうの方から敵がいる。あいつらに穴掘って隠れるって文化はないのかノコノコといるけど。」
「そうだね。それとさ、なんか…、雪降ってきてない?」
確かに少し寒くもあるし、雪も降ってきている。まずいかもしれない、私達も寒い如きで死にやしないけど、向こうの軍人たちは違う。
[隊全員に強制通信]
「こちらRCU-002。まずいことになった。気温が下がってきている、このままでは軍人も危ないし、私達も戦闘がままならない。原因の排除のため原因の特定をお願い。」
『こちらECU-140。了解です、原因の特定を直ちに開始します。』
[通信終了]
背中に背負っている大きい剣を抜刀する。敵が近づいてくるに渡って異能持ちの異星人がいるとしたら早々に排除しなければならない。
『攻撃を開始してください。』
通信機器から声が聞こえた。びっくりした。やっぱり通信フィルターがないと急に人の声が聞こえるから慣れない。
「3号、できるだけ無理はしないでね。」
「わかってる。でも、さっさとこの雪を止ませないと。」
雪は厄介だ。3号もこころなしか不安そうだ。意外と寒がりだったりするのだろうか。
2号たちは敵の方へと走る。だが、攻撃をしかけたのは敵陣営の方だった。地面から針のような氷が出てきて2号は慌てて避ける。
「ひぇ?!避けられちゃったよぉぉ!!こ、殺されちゃうっ!!!」
「隊長が脅えてるんじゃないんだよー。パモラはもうちょっとなれよー。」
いつの間にか4人の男女たちが自分の前にいて驚いた。慌てて剣を構える。大粒の雪が頬に触れる。
『寒い…、痛い……。』
ビビって仲間に泣きじゃくってる男の声が頭の中で流れる。だが、3号に不意に捕まれ引きよれさせる。さっき自分がいた場所はまた氷と針ができていた。本人は情けないが恐ろしい能力。
「2号、ぼさっとしない。」
「すみません。」
そう言いながら構え始めるが、全員子供だ。明らか18才未満。私よりも年下の子。
「躊躇わないで、アイツらは異星人。アイツらは敵。」
「分かってる…。」
[732号に通信]
「フェノール、そっちから2人の人員持ってきて。余裕があればでいい。位置情報は送信しておく」
『了解』
[通信終了]
相手の警戒が強まったが、応戦するしかない。だが、その時小柄の女の子が泣き始めた。泣き崩れて身長の高い女の子に縋りつく。
「もうだめですぅぅっ!!怖いっ!!怖い怖い怖いっ!!!カラオっ!!私を守ってくださいぃぃっ!!!あなた戦えるじゃないですかっ!!」
「サワメも戦うであります!!!そうやって縋り付くのは卑怯であります!」
絶望的に連携が取れていない。だから、そこを狙った。カラオという女の子を狙って剣を振り下ろして肩から腹部まで振り下げたが剣先を掴まれた。
右から尖った銀色の何かが飛んできて慌てて避けたため剣を手放した。だが、カラオが私の剣を取り油断してるところを3号は切りかかった。
3号がきりかかり、辛うじて致命傷は避けたものの、カラオは腕に浅い傷を負った。
「2号!!剣!!」
カラオが斬られて反射で落とした剣を私の方へぶん投げ慌ててキャッチすると、また地面から氷が大きな針となり今にも刺される勢いだった。
慌てて避けたが、こいつら絶望的に連携が取れていない。戦い慣れてすらいない。
「カラオ大丈夫?!!」
「だい…じょうぶ…であります…っ…。」
この子達は同士討ちが怖くて下手に動けていないんだろう。
「おかしい!!この子達サワメのきいてない!!」
「わ、私ずっとやってるっ!!だ…、だめなの!!あの2人っ!!魂が普通じゃないよっ!!!」
サワメとやらは怯えながらそういうが言っている意味がわからない。ヤケになったかカラオは雑に殴りかかる。その拳を手で受け止め蹴り上げた。
『痛い…、痛い痛い痛いっ…!!!』
その声が聞こえ、振り上げた件を持つ腕がピクリと止まってしまった。
上から鉄針のようなものが降り注ぎ慌てて避けるが頭を防御した腕や肩やらに刺さって鬱陶しい。3号も至る所に刺さっていた。
「3号大丈夫?!」
「いっ……いや大丈夫っ!!」
不自然な繋げ方。痛いと言いかけたけど、へんに言葉繋げて喋ったんだろう。
「ヘカテ!!危ないっ!!」
3号はヘカテ?とやらの鉄針のようなものを振らせた少年に刀を突き立て走り出す。慌てて走り出すカラオに切りかかるが足が動かないことに気づき足元に目をやる。
足が氷に侵食されていたのだ。足からどんどん冷たいものが迫ってくるような感覚。そのままカラオは3号の方へ行くと思い、隠し持っていた銃でカラオの心臓目掛けて撃った。
「カラオっ!!!!」
カラオは走っていた勢いをなくしそのまま地面へと体を強打する。足に絡みついている氷は肌に突き刺さるように温度を下げていった。
さっきから大泣きしているサワメとやらの子は更に大泣きしていた。サワメがどんな能力か分からないから頭狙って撃った。
だが、銃弾は氷壁により塞がれた。あの水色の髪の異星人が防いだんだろう。氷を破壊しようと剣を振り下ろす。勢いあまって足にちっと刺さった。
「ひぇっ?!痛くないのあれッ!どしがたいっ…」
「パモラっ!!!そんな事言ってる場合かじゃないよー!」
また鉄針のようなものが飛んでくる。慌てて避けてる隙にさっき銃で撃ったカラオが鉄針降らせてる鉄針男に持ってかれそうになった。
2号は無理に突っ込んでカラオを確実に仕留めるために鉄針男の頭に剣を刺したあと、もうひとつの剣を取り出し勢いよくカラオの首に振り落とす。
「カラオッ!!!ヘカテッ!!!!う、嘘だよねっ?!ねぇっ?!」
雪を降らせてる少年を無視してヘカテというやつに剣を振るう。横に。目の前にあるのは切り落とされた2人の首と身体が地面に落下した。
鉄針がやんだことで3号は雪を降らせてる少年の方へ言うが地面が凍り始めた。気温がどんどん下がっていることを感じた。雪がまた強くなる。
「これ、どういう状況?」
リベルとフェノールがこのタイミングで来た。リベルは誰かの生首…、いやさっき泣きじゃくってたサワメの首を持っていた。
『寒い…、痛い痛い痛いっ!!』
手が雪に触れた途端、またもやさっきの声が聞こえた。少年の声。だが、リベルも3号もフェノールも躊躇いなく少年に向かった。
続いて走ろうとしたが、向こうの方から大きな爆発が起き、風圧で吹き飛ばされそうになる。そのせいで私たちは後ろへ少し戻された。
また、空間が歪んだ。イシスやリシスとの戦いでもこんなことがあったこの空間。色が反転した空間。そこに居たのは、私と3号だけだった。
大きな耳鳴りが鳴った。キーンと脳に刺さるような高い音が頭に響いて思わず地面に膝を着く。3号も私と同じ状態なのか苦しそうに地面に膝をつく。
「お母さーん!!!ねぇねぇー!!見てみて!雪だるま!!!」
「凄いわ、パモラ。可愛い雪だるまね。」
今日は母さんと父さんと雪遊びをして遊んでる!母さんもいつも元気なさそうな顔なのに今日はすっごく笑顔!!
「パモラ、ついてきてくれる?」
「うん、いーよ!!」
母さんに連れられ森の中へ進む。森の中はすっごく危険ってよく言ってたのに今日は危険じゃないのかな?
お母さんは途中で僕をきりかぶに座らせた。お母さんは僕の肩をつかみ優しく撫でたあと立ち上がり、僕に背を向けた。
「母さん?どこ行くの…?」
「ちょっとお父さんに呼ばれたわ。悪いけど、ちょっと待っててくれる?すぐ帰ってくるから。」
「うん!分かった!!」
母さんはそういうと森から出ていった。僕は動かず待ってたせいか、寒くなりつけていたマフラーをぎゅっと握る。手がかじかんでうまく動かない。
「お母さん…まだ…かな……。」
手先がどんどん赤くなる。気づけば日が暮れていた。あたりは真っ暗になっていて、なにかの声が聞こえて凄く怖かった。
「寒い…、寒い…。母さん…、遅いよ…。怖いよ…。」
寒くて体が震える。体が勝手に震えてしかたない。どうしても寒くて怖くて涙が出てくる。息をするだけで喉が痛い。
けれど、不意に右腕が痛くなった。反射で立ち上がった。右腕に目をやると、熱くて赤い液体が垂れてきた。目の前には口が赤い犬がいた。
「いっ…痛い…、痛いぃっ…。」
痛い熱い苦しい。息をする度に肺が痛くて、苦しくて…、あれ…、なんか涙が…。また足に激痛が走る。恐怖のあまり怖い犬さんを叩いてしまった。
「痛いっ…痛い痛い”ぃ”ぃぃっ…やめてっ…痛いっ…。」
右腹や足首にまた激痛が走る。熱い液体がどんどん垂れてくる。痛くて思わず喉から枯れたような声が出て思わず地面に倒れてしまった。
「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”っっっ!!いあ”ぁぁっっ!!い”あ”ぃっっ…あ”ぁぁぁぁっ!!!」
お願いだから許してくださいなんて何度も懇願しようとしたけど言葉にならない叫び以外、声に出ることはなかった。
けれど、なにか気持ち悪い感覚がして自分をひたすらに守りたいと思った。死にたくないと思った。
その時、僕を襲っていた5匹の狼は氷柱に貫かれ、死んでいた。自分がやったと何となくで理解した。
気づけば、陽が登っていた。体がどんどん冷たくなる。ずっと寒くてずっと怖くてずっと泣いていた。
「なーにしてるの?大丈夫?」
気づけば身長の低いお姉さんが僕のことを見つめていた。お姉さんは僕に自身の着ていた上着を着せる。
「あなた…だ…れ…。」
「よーくぞ聞いたね!!私はイシスだよ。あ、でもお姉さんって呼んでね!!」
お姉さんは僕の怪我を凄い力で治してくれた。でも、ずっと体はずっと寒くて…、意識が途切れ、気づけばお姉さんは居なくて、施設にいた。
その時、実感した。その時、理解した。…僕は、父さんの母さんに捨てられたんだと。僕はあの時から、森で待ってと言われた時から、見捨てられていたんだって。
[3918年5月11日/3号]
い、今のは一体…。体が何故か寒くなってきた。2号も頭に入ってきた映像に困惑している様子だった。
色が反転した空間でパモラはずっと泣いていた。攻撃は何もしない。ただ雪だけが降っている。フラつく身体を無理に立ち上がらせる。
『僕はいらない子なんだ!!寒いっ!!寒い…!!誰か…、助けて…。』
この子を見てると昔のことを思い出す。同情なんてしない。同情なんてしちゃダメだこいつは異星人。こいつは人間じゃないこいつは化け物…。
2号が立ち上がるとパモラの方に剣を向けて歩き出す。多分、殺す気なんだろう。2号は、パモラに向かって剣を向ける。
「誰か…、助けて…。」
2号は剣を振り下ろそうとした時、僕は2号の腕を掴んでいた。
コメント
1件
読了しました。今回も重く、美しい話でした。 特に印象的だったのは、9号(パモラ)の過去と現在が「寒さ」と「痛み」でリンクした瞬間です。「寒い…、痛い…」という声が、幼い捨てられた記憶のフラッシュバックとして響いてきて、胸がぎゅっとなりました。イシスが一瞬現れたのも、後にリシスとの因縁へ繋がる伏線でしょうか。 そして最終盤、2号がパモラにとどめを刺そうとしたところを3号が止める場面も、命のやりとりの中に「情」がのぞいて、心を揺さぶられました。続きがとても気になります……!
#恋愛
ばたっちゅ
4,526
215
#BL
NGS_ヘビーなしっぽ
204