「ああ、青か。それなら水だな。これに水でも入れてみてくれ」
そう言ってダリルさんは空のカップを私の前に置いたっす。
「いや、さすがに何もなしでいきなりとか無理っすよ」
そうっす。手を振り否定しながら言っていると
「うむ、水だな。それもさっき行ってきたって言う川の水か?」
ダリルさんは空のはずのカップから水を飲んでいたっす。
「魔術ってのは、それを知っているなら出来てしまうものなんだ。人によって規模は変わるがな。水を知っている。指の先に灯す火は知らないから教えた。フィナの風もそうだな」
チョロフは足元でノビているっす。
「あとは──紫に橙、藍、黄か」
そう、2羽減って1羽増えているっす。
「ふむ、とりあえず紫と橙はいま捕まえろ」
「え? えぇっ⁉︎」
ダリルさんは私の手を取り小鳥たちの方に向けたっす。そうすると、その2羽は私の手に乗って肩まで登ってきて頬にツンとして消えていったっす。
「な、何で? えぇー?」
「まあ、あいつらは先の3羽に釣られて来ただけだな。橙は陽。紫は陰。どちらも使いどころの難しいものだが、ほかのエレメントとの複合でその効果を増してくれる。あとは藍と黄、か」
そんなあっさりと。もう殆ど終わったじゃないっすか。
「じゃあその2羽は何なんすか?」
ジトっと軽く睨まれるっすけど、ヒントくらいいいじゃないっすか。
「はぁ。まあ、これらは少し無理があるからな。そうだな、藍は氷。黄は雷だな」
何言ってるんすか、氷? そんなの真冬でもなかなかっすよ? あとは雷? なにそれ、いやあの空のピカピカって奴っすよね? あんなん分かんないっすよ? あれを受けた大木が真っ二つになってるの知ってるっすからね? そんなん無理っすよ。馬鹿ですか? 着せ替え変態な上に馬鹿なんですかー?
「全部声に出てるぞ?」
「あ……えへ?」
「フィナさん、アイアンクローってこんなに痛いんすね」
チョロフはまだノビてるっす。
「エイミアちゃんっ! 氷ならダリルが用意できるよっ!」
いつの間にいたのかミーナちゃんが教えてくれるっす。
「え、じゃあお願いするっす!」
「ただで? 俺はお前がやり遂げると信じてるんだがなぁー」
「うっ……。けど氷なんてこの真夏に、さすがに無理っす。だから頼むっす! 何でもするっす!」
「よしっ! 決まりだな! さーて、何してもらおうかなー?」
くっ……安請け合いしたっすかねぇ?
「何でダリルさんも召喚できるっすかー?」
私たちはチョロフとミーナちゃんを店に残して北の山にやってきたっす。ダリルさんの巨鳥に乗って。
「出来るから出来る。魔術とはそういうもんだ」
くっ、違うと言いたいけど、ここまで私がそうだったっすから何も言えないっす。
「まあ、それでも召喚はお前にはさすがに無理かもな」