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「ここだ。この洞窟は今のこの時期でも寒くて冷たい。氷に触れながら手を伸ばせば行けるはずだ」
「ダリルさま。ここは、寒い。うさ耳凍るかも、知れないよ」
この子は山に住んでいるダリルさんの知り合いのマイって子っすね。いきなり現れたからびっくりしたっすけど、優しい感じで好きっす。けどこの子も超常の何かではあるっすね。
「そうだな。うさ耳、覚えたての魔術の出番だ。橙と赤で身体を寒さから守る加護が得られる。焚き火に当たった時のような暖かさをイメージしろ」
スタッフを構えて、イメージする。うさ耳って酷いっす……あ、暖めるイメージ……。
私の身体がポカポカして寒さを感じなくなったっす! 凄いっすよ! すご──。
「ぷっ」
「ダリルさま、笑ったらだめ。むしろ可愛かった」
え、何? いや、え? ……なに?
「お前の今の魔術はぜひオリジナルを名乗るといい。まさか魔術を行使した光がうさ耳の形になるとは。俺の知らない事もあるもんだな」
そんな事になってたんすか⁉︎ いや、それってどう考えてもダリルさんのせいっすよ⁉︎
「でも、可愛かった。教えて。やり方」
くぅ〜っ、イメージする時にうさ耳を反芻するなんて言えないっす! くっそー!
「あとは黄だけだな。どうした? 走り過ぎてか顔が赤いぞ?」
「違うっす。今も私の周りを暖めるこの光がうさ耳の形をしていると思うと」
「ああー、それな。発動の瞬間だけでいまは身体を覆ううっすらとした光だけだから。そっか、自分からは見えないからな」
くぅぅぅぅ〜早くそれ言えっすよぉ。
「でも可愛いから、また見せて、ね」
「また今度っす……」
「まあ、とりあえず寒いから出るぞ」
結構奥の方まで来たっすから、帰りも少し遠いっす。
先を行くダリルさん。そのダリルさんと私の間にもう一羽。
あれ? 残り黄色だけじゃないんすか?なんすかねえ、この子は──っと。手を差し出してみるっす。
「おい! それはダメだ!」
ダリルさんが私を突き飛ばして押し退けようとするけど、その前にこの子が、真っ黒で目の赤い小鳥が私の指に触れたっす。
指の先から、一気に入って、きて……侵される、っす……。
ゴオォと渦巻く黒の渦。その中心にいるのは、私っすね。でも何も聞こえないっす。声も出ないっす。もう目も見えないっす──。
草原でカラフルな魔術士たちは黒に飲み込まれたっす。私も、沈んでいくっす。みんなの心が消えていくのをただただ見ているだけしか出来ないっす。ここには私ひとり──どこまでも続く奈落にもう光は射してはこないっす。