テラーノベル
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メインルームに戻った拓人は、ローテーブルに置かれていたスマートフォンを拾い上げた。
画面いっぱいに、通知センターのダイアログで埋まり、彼は訝しげに眉根を寄せる。
(スマホの電源……ずっと入れっぱなしだったか。すっかり忘れてたな……)
メッセージアプリで内容を確認すると、闇バイトの主犯グループ、『送迎役』のリーダーからだった。
『このまま逃げ切れると思うな。お前の居場所は把握している。時期を見て捕まえて、ぶっ殺してやる』
同じような内容の文章が、何十通と受信され、拓人はゲンナリしながら大きくため息をついた。
(そろそろ…………立川から離れた方がいいって事か。だが、その前に……)
彼は、発信履歴を表示させると、松山廉の携帯電話番号をタップした。
七コール目で、廉が電話に出た。
『…………もしもし』
寝起きなのか、廉の声が呆けた声音で応答している。
「何だ? まだ寝てたのかよ」
掠れた声音の友人に、拓人は無性に苛立ち、長い前髪をクシャリと掴んだ。
『ああ……昨日は夕方までに女を返すって約束だったのに、深夜になってしまって、すまなかった。…………帰り道、渋滞に……巻き込まれちゃってさ。お詫びではないが、報酬は、指定された金額よりも上乗せしたから、確認して欲しい』
「…………分かった。後ほど、確認させてもらう」
拓人は、ローテーブルに放置されていた厚い封筒を、チラリと見やった。
だが、このまま電話を切るわけにはいかない。
自分の中にある、今まで抱いた事のない、名称不明な感情をハッキリさせるためには、廉に会わなければならない、と拓人は思った。
「なぁ、廉」
『何だ?』
彼は、怒りと焦燥を鎮めようと、腹をグッと据える。
「それはそうと、今週の金曜日の夜、空いているか?」
『…………珍しいな。お前から誘ってくるなんて』
ひと呼吸を置いた後、廉は返答するが、拓人は、その間さえも、どことなく怪しく感じてしまう。
「いや……久々に廉と『男同士の話』をしたいと思ったワケよ」
『…………』
電話越しの廉は、考えを巡らせているのか、黙ったままでいる。
吉と出るのか、凶と出るのか。
廉はまだ、答えを出そうとしない。
沈黙の背景にある廉の答えを、拓人は、封筒に視線を落としながら、静かに待ち続けた。
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