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赤や緑、オレンジ、青と藍、紫色。鮮やかな光を黒は空から落ちて来て塗り潰したっす。綺麗な草原は色を無くして塵へと還る。私たちは奈落に向かって今も落ち続けているっす。
途中で争いに暮れる王国が、魔獣に怯える国民たちが、巨大なツノを持つ牛アタマみたいだけれどそれよりもっと凶悪な魔獣が討ち滅ぼされ、魔獣たちを屠るヒトたちが現れては消えて、王国はまた魔獣に怯える。
その瞳、私の知らない世界と人々が、今度は内側にも恐れ怯え、そしてその全てが黒に飲み込まれてなくなったっす。あとに残ったのは花園とひとつの街?
黒の奔流はそれらを包むようにして、そこにあり続けた。私はもうどれくらいここにいるっすか? 五感なんてとっくにないのに、その光景だけが繰り返される。黒く塗りつぶされて私は……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
「エイミアっ!」
ずるりと、何かが私の体から抜け落ちていったっす。手に持っているスタッフの輝石は透明で、いまの黒色に全部持っていかれたのがわかるっす。悔しいっ──。
「あぁぁ……うぅ〜。うああぁぁ」
私はダリルさんに抱えられたまま、立つ気力も無くしたっす。だって、あんなに色んなことあってやっと集まったのに
「返せっすよぉ、ぐすっ、どんだけ頑張ったと思っているっすか。ひっく、ダリルさんにもぉ、ひぐっ……」
「ここで、待っていろ。すぐに取り戻してやる」
ダリルさんはまた私の頭を優しく撫でてくれたっす。
ダリルさんは白い棒を咥えて魔術で火をつけたっす。
「マイ、うさ耳を頼む。このスタッフ借りるぞ」
それはダリルさんのっすよ。けれども声には出てこない。ダリルさんの体を包む魔力がとても綺麗で。
「マイは、闘えないよ?」
「守るだけならここでお前に敵う奴など居まい」
「うん、任せて」
ダリルさんは白い棒を一息に灰にして、煙を吐き出したっす。
黒い小鳥は、天井に広がり視界を黒く染め上げるっす。
全てが黒に染まって、それはさっきまで見ていたもののようで──。
「ああ、だめっすよ、これはもうダメなんすよぉ」
「泣くなうさ耳。大丈夫だ、俺の友達が来てくれたからな」
ダリルさんの手のひらにはいつのまにか、白く輝く小鳥がとまっている。その小鳥を中心に赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の光がそれぞれ円を描くように飛び交い、綺麗な球体となったっす。
黒も負けずに光を迸らせる。けど。
「黄色が無いっすね……」
私はまだ黄色い小鳥は捕まえていないっすから──。
「そうだな、のんびり見習いのおかげで、こいつは勝てなかったんだ、俺には、な」
ダリルさんの掲げたスタッフの輝石は虹色に輝き白の小鳥はさらにその輝きを増したっす。
「響き渡るは天上の讃歌
与えられしは清澄なる雫
地より出でし魂の慟哭に
讃えよ、かの御業を
闇を切り裂け
破邪の光、セイクリッドブレイド!」
眩い光がその領域を広げて闇を討ち払っていく。不思議と私の目はその光を映して、なにか救いを与えられたような暖かさを感じたっす。闇は一片も残ることなく、消え去り後には静寂が残ったっす。