コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
その静寂の中で、三角座りして脚の間にめり込むほど顔を埋めるうさ耳が1人、私っす。
「な、な、な、なんでぇ……なんでダリルさんがその、そ、その詠唱を知ってるっすかぁ。それは、私のノートの……」
「なんだっけ? “未来の大魔術士エイミアの華麗なる道のり”だったか? お前が孤児院で遊んでる時に、置いてあったのを見つけて、な。いや、なかなか面白いものだな。憧れは時にそういう副産物を産み出すものなんだな」
なんかダリルさんは飴玉を舐めながらそんな風にさらっと覗き見を暴露してるっすよ。
「あああぁぁぁぁぁぁぁー!」
「さて、とりあえず出るか、行くぞ」
ダリルさんはそう言ってしゃがんで背中を差し出してくれたっすから、せっかくなのでおぶさる事にしたっす。
「でも、どうしようっすかね。せっかくなのにもう全部無くなったっす……」
「うん? あー、なるほどなるほど。とりあえずこれ返すぞ」
ダリルさんからスタッフを受け取ると──輝石は黄色を除いた6色に輝いているっす。
「な、なんで?」
「別に無くなったわけじゃ無い。あのフィールドの魔力を黒が全て、それこそお前のちっぽけな魔力も全部持っていったから光らなかっただけの事だ」
「え、じゃあダリルさんは、どうやってやったっすか?」
「捻り出したさ。あのくらいは造作もない。黒のエレメント一つで俺をどうこうなんて出来やしないさ」
なんか凄いヒトっすね、本当に。
「さて、とりあえず氷の件は何してもらおうっかなー?」
ここに来て何でもするを徴収する気っすこのひとは。
「そ、それは黄色もやってから──」
「いいや、ダメだな。一つずつだ」
「えぇー、そんな。今そんなこと言われてもっすよぉ」
どんな悪辣な要求が待っているのか分からないっす。それがふたつともなると、少し心の準備が必要っすよ。
「ダリルさま、うさ耳触りたい、それでいい」
「あっ⁉︎ マイっ……」
「え、耳? え? ダリルさん私のうさ耳をそんな目で見てたっすか?」
「うっ……だめか?」
なんかそれでいいのかとか思ってしまって、気が抜けるっす。
「はぁ、仕方ないっすね。あんまり他人に触らせたりしないけど、特別にいいっすよ」
「そ、そうか。じゃ、じゃあ触るぞ」
なんでそんな嬉しそうに若干照れてるんすか。そんな風にされるとこっちまで恥ずかしく──バチッ
「いだっ⁉︎ なんか痛いっ、痺れたっす! なんなんすか、いまの!」
「ん? 許可は得たぞ。こればっかりは調整が難しくてな。先に断っておかないと怒られそうなのでな」
「なんの許可を得たっすか⁉︎ 耳を触るのに何したっすか⁉︎」
「黄色。雷ってのは痛くてバチってして痺れるもんだ。今なら親指と人差し指の間にでも出るだろ」
ダリルさんはそう言って指で丸を作ったその親指と人差し指の間にバチバチする小さな雷を見せてくれた。
「え、ええ?……あっ」
いつの間にか肩にいた黄色い小鳥も私の中に入って来て、私は指の間に小さな雷を作っていたっす。
「これで全部揃ったな。輝石を見てみろ、それがお前の色だ」