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来世はくらげ
#ダークファンタジー
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「 過去 。 」
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戦闘のあとだった。
あの光景はもう二度と見たくない。
街の外れ。
壊れた歪者の残骸だけが、まだ俺達の空気に残っている
誰もすぐには動かなかった。
レンは息を整えている
Laiaはいつも通り、何も無かったような顔をしている。
そして俺だけが、そこから目を逸らさなかった
「……Laia さっきのはやりすぎだ。」
静かに言った
『…効率は、良かったでしょ』
Laiaは軽く返す
軽さだけが、そこにあった 。
その瞬間だった
俺の中で、 “ 過去の声 ” が揺らぐ。
【兄ちゃん……どこ……】
【なんで見てるだけだったの……】
【助けてよ……兄ちゃん…】
「……っ…」
これは、” 戦闘の残響 “ じゃない。
もっと奥にあるやつだ。
( 間に合わなかった、んだな。)
「……違う。」
思った言葉は、いつも通りのはずだった
でもその瞬間、
視界が、少しだけ揺れた
頬に違和感が落ちる
熱いとか、冷たいとかじゃない。
ただ、” 落ちている “ 感じ。
指で触れる
濡れている。
「……」
これは、血じゃない。
…怪我も、するはずがないだろう。
じゃあ、なんだ?
なんで…俺は…
” 止まっているはずなのに、何かが出ているんだ? “
Laiaが振り返り、俺に気づく
『……シキ?』
呼ばれても、返せない。
理由がわからないからだ。
〈…シキ、どうしたの…?〉
でも俺は、首を振る
「…なんでもない」
声はいつも通りだった
でも、頬から落ちていくだけが止まらない。
(…誰かの喪力か…?)
俺の中で、もうひとつの声が重なる
【……助けてよ…】
「……っ。」
一瞬、息が詰まる
それでも俺は、気づけなかった。
(俺は正常だ。問題ない。)
Laiaは何かを言いかけて止める
レンは一歩踏み出して止まる
誰も、正解を持っていない
俺だけが、
立っている。
────────
空気が中々戻らない
誰も動けないまま、時間だけが止まっているようだった。
まだ頬の感覚はある
でも、それを気にする余裕はもうなかった。
「……Laia」
『…なに』
いつもの軽さは戻っていない
さっきよりも、少し ” 人の声 “ に近い。
「…説教だ、こっちへ来い。」
『説教って… 俺何も悪いことなんて…』
「…さっきのは、処理じゃない。」
一瞬の沈黙
『…じゃあ何なんだよ。』
答えを探さない
探す必要がないからだ。
「切断だ。」
言葉が落ちる
レンが息を呑んでいるのが分かる
「見てない 感じていない
お前はもう、”届く側”にいない。」
Laiaの目が細くなる
『それ、悪いこと?』
その問いは、すこしだけ震えていた。
「悪いかどうかではない。
戻れなくなる という話だ。」
一瞬、空気が変わる
『戻る必要ある?』
その声には、まだ抵抗がある。
でも、もう軽くはない。
俺はそこで、少しだけ視線を落とす
(……こういう奴は、何度も見た)
「……そうなって崩れた人間は、多く見た。」
〈……シキ、それ……〉
俺はすぐさま首を振る
「すまない。なんでもない。」
でもその”なんでもない”は遅かった
Laiaは黙っている
初めて、処理でも軽さでもない沈黙。
俺は顔を上げる
「お前は正しい側にいるかもしれない。
でもそれは、”見ないで守っているだけ”だ。」
「…救けてない。
減らしているだけだ。」
俺の言葉で、Laiaの呼吸が止まる
レンが初めて俺の姿を見る
Laiaは少しだけ、後ろに下がる
『…じゃあ、俺はどうすべきだったんだよ。』
その問いは、今までと違った。
逃げじゃない。
俺は、少し間を置いてから静かに言う
「…間に合う方法を、探せ。」
それだけだった
Laiaは何も返さない。
でもその沈黙は “ 拒絶 ” じゃない。
考えている沈黙だった。
(…まだ、間に合う)
その瞬間だけ、少しだけ息が軽くなる
でもその代わりに。
頬の違和感が、また落ちる
気づかないまま