テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
風が止んだ。
その瞬間だった。
カツ、と背後で足音が響く。
「おい」
低い声。
アルドは足を止める。
ゆっくりと振り返った。
そこに立っていたのは、数人の男。
武器を持ち、隙のない構え。
ただのチンピラではない。
一目で分かる。
――戦い慣れている。
男の一人が、にやりと笑う。
「見ねぇ顔だな」
「旅人か?」
アルドは少し考え、
「まあ、そんなところだ」
とだけ答える。
その瞬間。
気配が一斉に動いた。
屋根の上。
路地の奥。
背後。
完全に囲まれている。
アルドは小さく息を吐いた。
「……やっぱりか」
男が一歩前に出る。
「悪いな」
「ここ、通行料が必要なんだよ」
「持ってるもん、全部置いていきな」
周囲から、くぐもった笑いが漏れる。
アルドはフードの奥で目を細めた。
「一つ、聞きたいんだけどさ」
その言葉に、男たちが少しだけ動きを止める。
「この町、最近どうなってる?」
「魔王の噂とか、冒険者の動きとか――」
言い終わる前に、
男が鼻で笑った。
「は?」
「何言ってんだお前」
別の男が剣を肩に担ぐ。
「そんなのどうでもいいだろ」
「金だけ置いてけ」
アルドは少しだけ間を置いた。
「……いや、だから」
「ちょっと話を――」
「うるせぇな」
言葉を遮るように、男が吐き捨てる。
「こっちは遊びじゃねぇんだよ」
その目が鋭くなる。
「金か命か、どっちか選べ」
沈黙。
アルドは、ゆっくりと頭をかいた。
「……あー」
心底面倒くさそうに呟く。
「少し礼儀がなって無いようだな。」
一人が地面を蹴った。
「死ね」
刹那。
剣が振り下ろされる。
だが――
止まった。
「……は?」
男の動きが止まる。
アルドの指先が、軽く剣に触れていた。
「そうか」
小さく呟く。
「来るなら……」
視線だけで周囲をなぞる。
「まとめて相手してやるよ」
フードの奥の瞳が、わずかに光る。
「――解放(イベレイション)」
次の瞬間。
空気が歪んだ。
見えない圧力が、周囲に広がる。
「――っ!?」
男たちの顔が一斉に引きつる。
膝が沈む。
呼吸が乱れる。
立っていることすら困難。
「な、んだ……これ……」
誰かが震える声を漏らす。
アルドは一歩、前に出る。
それだけで。
さらに圧が増す。
「もう一回だけ聞く」
低く、逃げ場のない声。
「この町の情報、知ってること全部話せ」
静寂。
さっきまでの余裕は、完全に消えていた。
男の一人が、後ずさる。
「こ、こいつ……」
アルドは小さくため息をつく。
「……ほら」
「どうする?」
町の外れ。
土煙が静かに舞い上がる。
規律ある足音。
揃った鎧の音。
その先頭を進む、一人の男。
「……冒険者狩り、か」
低く呟く。
青いマントが風に揺れる。
王国白銀騎士団隊長――カイル・レオンハルト。
その隣には、副団長リシア。
後方には各隊が整然と続く。
リシアが目を細める。
「……妙ですね」
「町の空気が、変わっています」
カイルは足を止めない。
ただ静かに言う。
「急ぐぞ」
「何かが起きている」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#ファンタジー