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結局、アリスはモートと二度目のデートをすることにした。

奇跡的にエンストを一回だけしかしなかった。8時35分着のノブレス・オブリージュ美術館行きのバスが停留所に着くと、アリスは除雪車の行き交う横断歩道を渡り、さっそく高価なチケットを一枚買った。

様々な美術品を観ながら館内のモートを探し回ること一時間。モートは館内の広々としたサロンの一角にある質素な椅子に座っていた。まるで、いつもそこに座っているかのような妙に座り慣れた感があった。モートはデートの誘いに対して少し考えているようだったが、首を縦に振ってくれた。

「今は黒い魂も見当たらないし、何もないから、たまにはアリスの声を聞きたい」

そう言って、アリスはモートと早速、クリフタウンのレストラン「ビルド」へ路面バスで向かうことにした。この前の昼食で、モートはここホワイト・シティで評判な羊肉のソテーを食べ損なったので、アリスは気を回したのだ。

アリスは「ビルド」前にあるバスの停留所まで、クリフタウン行きの10時15分発の路面バスを使った。

「ビルド」はアリスにとって、病弱だった頃に通い詰めていた病院で、大切な生きるための喜びを食べ物で与え続けてくれた。いわば恩のあるレストランだった。

病院の昼食の時間になると、アリスはしばしば抜け出しては「ビルド」へと通っていた。

「あ! そういえばヘレンさんは?!」

不意に気が付いたことが、そのまま声に出ていた。アリスはヘレンに一昨日にノブレス・オブリージュ美術館で出会ったきりだった。オーゼムと大金の賭けをし、それからヘレンはどこかへと一人でふらりと行ってしまったのだ。記憶を辿ると、電話が掛かってきて、確か古代図書館のアーネストからの電話で……。それから……。

アリスはバス内で急に不安になりだし、隣に座っているモートに聞いてみた。

「あの。モート……。ヘレンさんは一昨日、一人でジョン・ムーアという人に会いに行ったのです。それからヘレンさんは帰って来たのでしょうか?」

それを聞いて、モートは抑揚のない声を発した。鼻をポリポリと掻いているが、決して関心がないわけではく。ヘレンは安全だという感じだった。

「ああ。ヘレンのところには、正確にはジョン・ムーアの屋敷へはオーゼムが行ったから……安心していいよ。後、オーゼムがヘレンに聞いてくれるはずだ。何かがわかるだろう……ヘレンから頼まれたあの絵画を探すことは、ぼくは聞きそびれたし、何故、ヘレンがジョン・ムーアにこだわることとかも……とにかくヘレンは心配ないよ」

路面バスは何度もエンストを起こしながら、クリフタウンへ向かった。急に灰空の空は厚い雲が覆い。粉雪が降り出した。

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