コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
駿は全てを話した。
梓の母が2週間前、仕事に言ってくると家を出てからの足取りが掴めず、行方不明になっている事。
そんな寂しい思いをしている梓を不憫に思った駿が自宅で匿っている事。
今朝、探偵事務所へ出向き、母の捜索を依頼してきた事。全てを話した。
最後に、梓に対して淫らな行為は一切していない事も付け加えた。
無論、風俗の件は話さなかった。話してしまったら問題になると判断したからだ。
話を聞いたつかさ、だされたお茶をすすり
「事情は分かりました。でも生徒を自宅に入れるなんて、あまりにも軽率すぎますよ?」と駿に詰め寄る。
「ですよね・・・」
「仮に警察に見られていたら、どうするつもりだったんですか?見られたのが私だったから良かったなんて 思わないで下さいね?それはあくまでも結果論なんですからね?」
駿はつかさからこれ以上ない正論をぶつけられ、返す言葉が見つからず、黙ったままうつむく。
「なんで?私は先生に何もされてないんだよ?先生は私の為に」梓は必死に弁解するが
「そこは問題じゃないの!」とつかさに遮られてしまう。
「どういう意味?」首を傾げる梓。
「俺みたいな成人したヤツが、未成年を親の同意なしに家にあげる行為は、法律で禁止されてるんだよ
何もしてないからOKとか、そういう話じゃないんだ」
「そんなぁ・・・」駿の言葉に梓は困り果てた様子でうつむく。
「皆川先生!それを知っていてなぜ、こんな軽率な行動を?」
「放って置けなかったんです・・涙ながらに助けてと俺にすがる金森を見ていたら、突き放す事が出来ませんでした・・・」
駿はつかさに視線を合わせず、うつむいたまま応える。
「まぁ、とりあえずは金森は私が自宅まで送ります。その後の事はおいおい話しましょう!いいですね?皆川先生」
つかさの問いかけに黙ったままうなずく駿。
「さぁ!金森さん?一緒に帰りましょう」
つかさが梓に帰るように促すが「私・・帰らないから!」と梓はつかさを突っぱねる。
「何を言ってるの?金森さん!」
「雛形先生・・全然分かってないよ・・」
「分かってないのはアナタよ!金森さん!」
「違う!分かってないのは雛形先生だよ!
お母さんの行方が分からなくて、寂しい思いをしてる私の気持ちなんて、ちっとも分かってくれてないじゃん!分かろうとしてないじゃん!
皆川先生は私の気持ち・・分かってくれてるもん!」
梓は涙を流しながらつかさに訴えかける。
「確かに辛いかもしれないわ!けどね金さん?アナタがずっとココに居たら、皆川先生が警察に捕まってしまうかもしれないのよ?それでもいいの?」
つかさの言葉に梓はうつむいて黙り込む。
「アナタは皆川先生と一緒に居るべきじゃないの!わかるでしょ?」
「で、でも・・・」
「お願いします!雛形先生!」
2人の会話を遮るように駿が土下座をする。
「先生・・・」梓は駿の行動に安心したように安堵の表情を浮かべる。
梓は私がココにいてもいいように先生は頼み込んでくれるんだと、そう思っていた。
しかし次に駿の口から発せられた言葉は梓の思い描いた言葉とは違った。
「金森をしばらくの間・・雛形先生の自宅に居させてあげてくれませんか?どうか・・お願いします」
駿は額をなんどもフローリングに擦り付けて懇願する。
「先生・・何言ってんの?」梓は予想外の言葉に唖然としている。
「皆川先生!頭を上げてください!」つかさは駿に頭を上げるように促すが
「お願いします!お願いします!金森にもう、寂しい思いをさせたくないんです!お願いします!!」
駿はそんなつかさの静止を振り切り、何度も頭を下げる。
そんな駿の行動に胸を打たれたのか、つかさは「わかりました・・・」と半ば諦めモードで駿の願いを聞き入れる。
「ありがとうございます」駿は安堵の表情を浮かべる。
しかし梓だけは違った。信じていた人から裏切られた、見放された、突き放された、そう思っていた。
「何勝手に話すすめてんの?私行かないから!ずっと皆川先生のそばに居るんだから!」
梓は2人の決定が気に入らない様子でその場に座り込む。
「さぁ!行くわよ金森さん」
つかさは座り込む梓を無理矢理立ち上がらせて、部屋の外に連れ出そうとする。
「離してよ!触らないで!」梓はそんなつかさの手を跳ね除ける。
「先生?今の話嘘だよね?」
梓は駿に問いかけるが、駿はうつむくはがりで口を開かない。
「何とか言ってよ!私と一緒に居たいって言ってよ!私と離れるのは嫌って、そう言ってよ!先生ったら!ねぇ!」
梓の問いかけに駿は「邪魔なんだよ・・」と言い放つ。
そんなやりとりをつかさは黙って見届ける。
「嘘ばっかり!そんな事・・思ってないくせに!先生・・嘘つきだよ・・・」
「仕方なく匿ってただけだ・・うるさい奴が居なくなってせいせいするよ・・・」
駿は溢れ出る涙を、どうか梓に見られまいと、自分のふとももを、力一杯つねる。
すると梓が駿の頬を平手打ちする。
「サイテー・・サイテーだよ先生!」梓の目からは絶え間なく涙が溢れ出る。
「ああ・・俺は元からサイテーな人間なんだよ・・猫かぶってただけなんだよ」
駿はうつむいたまま応える。
「もいいいよ!全部バラしてやる!洗いざらいブチまけてやるから!」梓はそう言い放ち
「行こう!雛形先生!」と言ってつかさの腕を引っ張り、玄関まで歩いて行く。
そんな2人を見届けずに終始うつむいている駿。
「さよなら・・先生」
梓とそう言うと、つかさを連れて部屋の外へと消えて行く。
1人きりになった部屋で駿は、声を殺しながら涙を流す。
「ごめん・・金森・・本当にごめん・・・」
駿はただひたすらに懺悔しながら泣くしか出来なかった。
つさかと共にタクシーに乗り、つかさの家に向かう梓。
梓ばずっと口を開かず、窓の外をじっと虚な表情で見つめている。
「そうだ金森さん?今日って晩ご飯ってもう食べたのかな?」沈黙に耐えきれずにつかさが口を開くが、梓は黙っただった。
「あ!そうだ!さっき変な事言ってなかった?バラしてやるとか、あれって」
「私・・そんな事言ってません」
梓はつかさの言葉を遮るように、窓の外を見つめたまま口を開く。
「え!?」つかさは驚いたように梓を見るが、ずっと視線を変えない梓から何かを察したのか「そ、そうよね・・私の勘違いよね、ごめんね・・変な事言っちゃって」とつかさは会話を終わらせる。
「先生のバカ・・泣きそうな顔で言うの・・ずるいよ」
梓は涙を浮かべ、心の中でそう呟きながら、窓から流れる景色をじっと見つめる。
梓とつかさが去り、1人きりとなった部屋で、駿がソファに座りながらうつむいていると、インターフォンが鳴り響く。
「なんだよ・・誰だよ・・」と駿はうんざりした様子でドアを開く。
すると「宅配館でーす」と配達員が笑顔で挨拶をしてくる。
「あ・・そうだった・・頼んでたんだったな」
いろんな事が一気に起こりすぎて、梓がデリバリーを頼んでいた事をすっかり忘れていた駿。
「ああ、ありがとうございます、ちょっと待ってください、財布とってきますから」
そう言うと駿は部屋に戻り会計を済ませて弁当を受け取る。
「金森・・何頼んでたんだ?」
駿が袋の中身を確認すると、ハンバーグ弁当が入っていた。
「ふたつあるな・・・もうひとつは明日食べるか」
駿はもうひとつのハンバーグ弁解を冷蔵庫に入れて、部屋で1人弁当をむさぼる。
「静かだな・・・」駿が寂しそうに呟く。