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第16話:未来の崩れ
夕暮れの都市区。
ホログラムの街灯が整然と並び、人々はいつも通り「修正された未来」に安心しきった笑顔を浮かべていた。
広場の大画面では、国家による宣言が流れている。
「本日も秩序は保たれた。未来の修正により、事故は未然に防がれた。」
人々はそれを疑わず、子どもたちは端末を振りかざしてはしゃいでいた。
その中に、一人の青年の姿があった。
名はカイ。
短い茶髪に薄緑の瞳、生成服のようなベージュのジャケットを羽織り、額の第三の眼は強く光っていた。
彼こそ、数週間前にクオンが過去から救い出した命だった。
だが今、その眼の光は異様に強まり、周囲の空気を歪ませていた。
「……どうして……俺はまだ生きている?」
カイの声は低く、怯えと狂気が入り混じっていた。
周囲の人々がざわめく。
「見ろ、あの男……第三の眼が暴走してる!」
「修正に耐えられない命なんだ!」
国家管理職の制服を着た監視官たちが駆け寄ってきた。
彼らは灰色の制服に端末を携え、冷たい表情のまま群衆を押しのける。
「未定義命体を発見。即座に処理対象とする。」
クオンは人波をかき分けて現れた。
黒い旅装束に淡い光を宿す灰色の瞳。
額の第三の眼が脈打ち、カイを真っ直ぐに見据える。
「……カイ。」
青年の身体が震え、光が暴発する。
周囲の建物が軋み、都市の秩序を維持するシステムが次々とエラーを起こしていった。
街の画面には赤い警告が走り、人々は悲鳴を上げて逃げ惑う。
「俺は……生きてはいけない……!」
カイの叫びに、第三の眼が崩れるように輝きを放つ。
クオンはその前に立ち、灰色の瞳を強く光らせた。
「生きる意味を見つけるのはお前自身だ。救った命を、秩序に壊させはしない!」
しかし国家管理職の監視官たちは容赦なく命令を繰り返す。
「削除処理を開始せよ!」
「未定義命体を消去する!」
群衆は泣き叫び、逃げる者もあれば、恐怖と好奇心で足を止める者もいた。
「やはり国家が正しい」
「いや、あれを救ったクオンこそ正しい」
市民の意見は割れ、都市全体が揺れ動いていた。
灰色の瞳と暴走する光が衝突する瞬間、都市の空気はまるで裂けるように震えた。
未来の秩序は音を立てて崩壊し始めていた。