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第17話:破壊者の烙印
都市の広場は修復されつつあった。
崩れた建物は国家管理職のオーバーライターたちが即座に「修正」し、昨日までの惨状はなかったことにされていく。
だが市民の記憶には残っていた──暴走する青年カイと、その背後にいたクオンの姿が。
「未定義命を救ったせいで都市が崩れかけた」
「救いだなんて嘘だ。あれは破壊だ」
「クオンは正義を語る破壊者だ」
街角の大画面には国家の声明が流れていた。
「クオンによる救出行為は秩序に重大な損害を与えた。
これ以上の放置は許されない。」
人々は端末に送られてくる「未来修正ログ」を確認しながら、安心と同時に恐怖を口にする。
「上書きされるなら安心だ。でも、あいつがまた動いたら……」
「国家が守ってくれるはずだ。」
その声を耳にしながら、クオンは裏通りに身を潜めていた。
灰の外套の裾は埃にまみれ、灰色の瞳は疲れた光を宿している。
額の第三の眼も、淡く脈打つように光っては消えていた。
「……俺の正義は、破壊なのか。」
呟いた声は誰にも届かない。
そこに、民間の支持者のひとり、リサが駆け寄ってきた。
黒髪を束ねた琥珀色の瞳は鋭く、茶色のコートの裾を翻している。
彼女は真剣な眼差しでクオンを見つめた。
「違う。あんたは破壊者なんかじゃない。」
だが後ろから現れたトーマが苛立った声を上げる。
緑の作業服に汗の染みた体格の大きな青年。
「けど現実に、救った命が都市を揺るがした。
国家はあんたを“秩序の敵”と呼んでる。俺たちまで巻き込まれるんだぞ。」
ミナは不安そうに三つ編みを指で弄び、水色の瞳を伏せた。
「……でも、命を守ろうとしたのは本当だよね……?」
クオンは三人を見渡し、灰色の瞳を細める。
冷静な表情の裏で、揺れるものがあった。
国家に追われ、市民に破壊者と呼ばれ、仲間でさえ疑問を抱く。
「俺の正義は……人を守ることのはずだ。
それなのに、なぜ救った命が社会を壊す……?」
第三の眼が淡く震え、彼の心の迷いを映し出すかのように光を失っていった。
街の空では、国家の無人機が低い音を響かせながら監視を続けている。
社会は秩序を信じ、クオンを異端の破壊者として刻み始めていた。