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「ロイヤル・スター・ブレックファースト?」
「そう。この街では有名だったけど、対抗組織の方が大きくなって、存在が小さくなったの……。あまり知られていないけど。今でも大きな活動をしているの。昨日の夜は、お菓子屋の「リッチ・スイーツ」が莫大な売上金を残していてね。従業員は戸締りをした後に早々に帰宅して行ったって、仲間から聞いて……危険だけど夜の街でロイヤル・スターに収集をかけようとしたの……その時はまだダイヤモンドダストなんてなくて……凍死寸前の時にオーゼムさんが歩いてきて……」
ミリーはたどたどしく言った。
ホワイト・シティでは夜は命に絶大に危険だった。そして、窃盗団では大きな方だったロイヤル・スター・ブレックファーストのことをモートは思い出した。
確かロイヤル・スター・ブレックファーストは子供たちだけの窃盗団で、強盗や殺人など重い罪はしないが、大掛かりな犯罪組織だった。ここホワイト・シティの子供たちの半数は少しは関わっているとも言われていた。
モートは子供を狩らないので、今まで目を瞑っているが、その組織的犯罪は売春からドラッグにまで至る。七つの大罪に関与しているかも知れなかった。
「ミリー。その組織からすぐに離れてくれ」
モートは優しく言った。
だが、急激にキッチンの温度が下がり、ミリーは白い息を吐いて震え上がった。
「え? ええ……。なんなの……モート? こんなに恐ろしい空気みたいなものは初めてよ? 一体……あなたは……誰?」
ミリーは突然、しゃがみこんで立ってられないほど体全体で震えだした。
「モート君。それくらいで……」
「ああ……」
モートはミリーの肩に手を置いて、強い眼差しを向けた。
「君は……狩らないから、安心して……」
辺りの空気が途端に穏やかになった。暖炉からの暖かい熱が部屋中に充満し、クリームシチューのいい香りが満たした。
「さあさあ、モート君もお腹が空いているでしょう。細やかながらクリームシチューを召し上がれ」
オーゼムは二階の三人の遺体を魔法のように光の彼方へと消え去ると、二人をキッチンの隅の角材の椅子に座らせて、テーブルには鍋ごとシチューを置いた。
「あ、ああ……頂きます……」
モートは朝食を取っていなかった。なので、随分と美味しいシチューを食べることにした。食べ終わったら早速事件の調査だ。
あれほど不思議なことや恐ろしいことに震えていたミリーもシチューには満足していた。