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夜更け、公園の舞台裏。
エリアはようやく封筒のことを話した。
数年前、家が苦しかったこと。眩しい箱関連の金が入っていたこと。返せないまま、名前だけきれいな支援へ形を変えられていたこと。
言い終えるころには、肩の力がほとんど抜けていた。吐き出したはずなのに、胸の奥にはまだ薄く痛みが残っている。
サペは黙って聞いた。
途中で口をはさまない。うなずきもしない。ただ、目だけはそらさない。
エリアは最後に、自分で笑ってしまう。
「ほら、笑えるでしょ。あんなに向こうのやり方に怒ってたのに、うちだけきれいじゃなかった」
「笑えない」
サペが言った。
「苦しい時に差し出されたもん、つかんだだけだろ」
「でも、黙ってた」
「いま言った」
短い言葉だった。
でも、それでエリアの喉に引っかかっていた何かが、ようやく少しほどけた。
「怒らないの」
「怒ってる」
サペは言う。
「おまえにじゃなくて、そういう黙らせ方してくる方に」
その時だった。
舞台袖の板の上へ、ひらりと何かが落ちた。
紙ではない。写真だ。
エリアが拾い上げ、サペも横からのぞき込む。
中学の卒業式の日の写真だった。
体育館の外、春の光の中で、サペとエリアとンドレスの三人が写っている。サペは封筒を持ち、エリアは振り返り、ンドレスは少し離れた場所でこちらを見ていた。
空気が凍る。
さらに二枚、三枚と足元へ落ちてくる。乾いた音を立てて板の上を滑る。誰かが上の通路からばらまいたのだ。
ピットマンの叫ぶ声が外からした。
「誰だ!」
走る足音。布の擦れる音。リボルが追う気配。
けれどエリアの耳には、写真の中の沈黙だけが残った。
何年も前の、言えなかった言葉。
確かめなかった誤解。
そして、いままた人に勝手に切り取られた三人の顔。
サペは写真を握りしめる。
紙が小さく鳴った。
「……やること、変わった」
静かな声だった。
けれど、これまででいちばん底の深い怒りがあった。
過去まで商品にするなら。
今度はこっちが、その過去を自分たちの言葉で取り返す。
#勧善懲悪
#勧善懲悪