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「スケルトンが、”魔法”を使えるなんて聞いてないわ…!」ミカは予想外の出来事に戸惑ったが、すぐに切り替え状況を冷静に分析する。
(敵が使っていたアレは、恐らく氷系の魔法。幸い属性相性はこっちが有利ね。なんとかパコを守りながらアイツにお見舞いしてやりたいけど……)
「…そこの赤髪の女。王の御前で何を突っ立っている。こうべを垂れよ」
(えっ、ていうかコイツ喋れたの??)
ミカは思わず心の奥で呟いた。
骸の王《スケルトンキング》はそういい掌をかざすと、空間から氷柱が現れ二人へ向けて容赦なく放たれた。
(くる――!)
「フレイマッ!」
ミカは迫り来る氷柱を迎撃する為に、火炎魔法で迎え撃った。
ボォンッ!
火球は、確かに氷柱へ直撃したはずだった。
だが、その勢いは衰えるどころか、なおもミカの方へ襲いかかってくる。
「キャアッ!」
ミカは 骸の王 が放った鋭い氷の刃を、寸前で体をひねってかわした。 氷柱は頬をかすめ、赤い一筋の血が滴り落ちる。
(な、なんで?相性は間違いなくこちらが有利な筈…!)
「カラカラカラ…何を驚いている?ほら、次はもう少し数を増やそう」
骸の王は再び掌をかざした。 すると、今度は数十の氷柱が瞬く間に形成され、ミカへ目掛けて一直線に迫っていく。
「くっ…数が多すぎるっ!なら…”フレイマーラ”!」
ミカも負けじと杖を振り上げると、先ほどの’フレイマ”とは異なり、広範囲を焼き尽くす火炎の渦が正面へ放たれた。
(フレイマは単体魔法。複数戦闘を想定した全体魔法、フレイマーラなら…!)
だが、なおも氷柱は溶け出すことなくミカへ目掛けて襲いかかる。
「そ、そんな……!」
「させるかっ!正確射撃《アキュレイトショット》!」
その時だった。隣にいた パコは自らの愛弓を引き絞り、一度に五本の矢を番えた。 そして狙いを定めると、ためらいなく一斉に放つ。
矢じりは鋭い軌道を描き、正確に氷柱を撃ち抜いて粉々に砕いた。
「す、凄い…!あのスピードの氷柱を正確に捉えるなんて」
「これはパコのスキル――正確射撃《アキュレイトショット》だ。視界に捉えた標的なら、どんな状況でも確実に命中させることができる」
「そんなスキルを持ってたなんて…パコはやっぱり凄い!それに比べて私の魔法は……」
ミカは杖を持つ手に力を込めると、悔しさから下唇を強く噛み締めた。
「カラカラ…小さきエルフはなかなかやるようだな、面白い」
骸の王は乾いた声で笑いながら余裕の笑みを浮かべる。 そしてここにきて初めて、その荘厳な玉座からゆっくりと立ち上がった。
「だが…いつまでも貴様らの相手をしているほど、王は暇ではない。よってこの一撃をもって、終わりとする。
暗き氷雪の世界で眠るがよい――”ニブルヘイム•マキシマ”!!」
骸の王は両手に魔力を込めると、一斉に解き放った。 すると、たちまち城内は氷雪荒ぶ極寒の領域へと変貌する。 頭上には幾千の鋭い氷柱が現れ、その一つ一つに禍々しい魔力が込められていた。
「”マキシマ”!?そんな上位魔法、王宮でも使える者なんてごく僅なのに、ただの魔物が使えるなんて…」
✳︎ ✳︎ ✳︎
魔法には、明確な等級が存在する。
初級から始まり、全部で五段階に分けられており、使用者の魔力量や習得しているスキルによって扱える等級は大きく変わる。
以下がその等級だ。
・初級魔法:固有名称のみ。(フレイマ、フレイマーラなど)
・中級魔法:マグナ
・上級魔法:マキシ
・究極魔法:ウル
・伝説•神話級魔法:アストラ
ちなみに、現時点でミカが扱えるのは 中級魔法《マグナ級》 までに限られている。
それに対して、 骸の王は 上級魔法《マキシ級》 の使い手だ。 魔術には属性の相性がある。
例えば、火は氷に強いが、水には弱い。
しかし、等級がひとつ上の魔法は、時にその相性すら凌駕する絶対的な力を持つ。
先ほど、ミカのフレイマが氷柱を溶かせず迎撃にも失敗したのは、この等級差が理由だった。
初級魔法のフレイマでは、骸の王が放った中級魔法の氷に対抗することはできなかったのだ。
「安心しろ。魔術師とエルフは、どちらも貴重な人材だ。 死して屍になろうとも――“あのお方”が、立派なスケルトンとして蘇らせてくださるだろう。
さすれば、我が配下として存分に可愛がってやろうぞッ!カーラカラカラッ!」
「すまんミカ…パコが無理言ってお願いしたばっかりに…」
「そんなことないわ。パコは何も悪くない。悪いのは罪のない村人達を襲ったホネホネ共よ!私は……最後まで諦めないわ!」
絶体絶命の状況。
言葉では強がっていたが、実際のところミカの魔力はもう残りわずかだった。
これではマグナ級どころか、初級魔法のフレイマを一、二度唱えるのがやっとの状態だ。
…それでも、ミカは諦めなかった。
震える手足を無理やり奮い立たせ、両手で杖をしっかりと握りしめると、その先端を天高く掲げた。
「カカカ、頼もしいな。よし…パコも諦めないぞ。ここを生き残って、勇者とミカにご馳走様をする約束だからなっ」
パコは再び弓を構え、骸の王の頭部へと狙いを定める。
スケルトンは基本的に不死身だ。 だが、魔力の核《コア》さえ破壊することができれば、再び動くことのないただの骨へと回帰する。
「ミカ、あれをやるぞっ!」
「ええ!」
二人は掛け声を合わせ、ボスエリアに入る前の階段で考えた”思いつきの技”を、一か八かで発動した。
「”合体奥義”――絶対命中の炎矢《アキュレイト•フレイマアロー》!!」
パコの放った銀の弓矢に、ミカの炎が重なるように|纏っていく。 赤熱の輝きは一瞬にして広がり、その姿はまるで空を翔ける不死鳥《フェニックス》のように、まばゆい光を放っていた。
スキル:正確射撃の効果により、その炎矢は一直線に急所へと向かっていく。
「カラカラカラ…ほぅ、面白い」
骸の王は対抗する様に、両手を広げなにかの魔術を唱え始めた。
「いけぇええぇえええぇえー!!」
凄まじい轟音と共に、矢は直撃の瞬間に爆発した。
爆煙があたり一面を覆い尽くし、ミカとパコはその衝撃で後方へ吹き飛ばされる。
シュウゥゥゥゥゥゥ……。
やがて、焦煙の霧がゆっくりと晴れていく。
「や、やったかしら……!」
そう呟いた次の瞬間、ものすごい速度で巨大な氷の槍がミカへと襲いかかる。
(っ――!間に合わなっ…)
万事休す。
氷槍は正確に、ミカの心臓を貫くかと思われたその時だった。
バリィィインッ――!!
だが、氷の槍は何者かによっていとも簡単に砕かれる。
「まさか…!!」
「…待たせたな、二人とも」
そこには、傷だらけになった、”半ケツ上裸の勇者”が立っていた――。
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