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第11話:初めてのチーム戦
研修三日目の午後。
香波対策局訓練棟のアナウンスが響く。
「これより二対二のチーム戦を開始する。暴走者役チームと制圧チームに分かれ、五分以内に目標を達成せよ」
春瀬拓真は局支給の軽量アーマーを着込み、インナーが汗でうっすら肌に張り付いていた。最近は腕や背中に筋肉がつき、装備の重みを苦にしなくなった。
庭井蓮は同じ装備を最小限に抑え、長身のラインを崩さないまま、首元の抑制バンドを手で軽く触れている。琥珀色の瞳は油断なく周囲を走査していた。
今回の相手は、攻撃系赤香波の神崎颯馬と、支援系黄香波の女子研修生・白石瑞希。
瑞希は肩までの淡い茶髪をひとつにまとめ、背中まで届く黄色い波を淡く揺らしている。その波は味方の集中力を上げ、拍動を安定させる効果があった。
開始の合図とともに、颯馬の赤波が真っ直ぐ突っ込んでくる。焦げ香と鉄香が入り混じる強烈な波——だが蓮が前に出て無香域を展開し、その波を鈍らせる。
「拓真、右へ!」
声に従い、拓真は瑞希の方へ回り込む。彼女の黄波が視界を柔らかく染め、動きのリズムを狂わせようとしてきた。
深呼吸。緑から黄、橙、そして赤へ。昨日までよりも素早く色を変化させ、拍動を保ったまま波を放つ。瑞希が後退し、颯馬がカバーに入る——だがその瞬間、蓮が颯馬の波を完全に無効化。
「決めろ!」
拓真は赤波を一点に集中させ、瑞希の足元へ叩き込んだ。訓練用センサーが反応し、シグナルランプが制圧成功を示す。
終了の笛が鳴り、颯馬が息を吐いた。
「昨日より速いな、お前の赤」
拓真は笑みを浮かべ、額の汗をぬぐった。
「蓮のおかげだ。でも……次は一人でも決められるようになる」
観覧席から、局員たちの評価の声が漏れてくる。
「持続時間も安定してる」
「絶香者との連携は即戦力だな」
蓮が横で小さく頷く。
「お前の波、もう“弱い”じゃなくなったな」
拓真はその言葉を胸に刻み、さらに強くなる決意を固めた。