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騎士団長は恋と忠義を区別できない

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騎士団長は恋と忠義を区別できない

21 - 【第二十話】最果ての森②(シド・レイナード・談 他)

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2025年12月10日

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「案外広いものなんですね」

ロシェルはそう言うが、決して広くは無いと思う。あくまでも『見た目よりは』といった程度だ。

入り口となる布の重なりを捲り、先に入ったロシェルに続き、腰を屈めて中に入る。荷物まで中へ入れると流石に狭いので、鞄一式は外に置き、それらには雨や朝露などで濡れないようロシェルが魔法で防護壁を張っておいてくれた。


掛け布団代わりの布が二枚と枕が二つ、テントを組んだ時点で既にもう運び込んで置いてある。この空間に二人で横になるのだと思うと……『俺は枕だ』と自分に言い聞かせていても、否が応でも緊張してきた。

「……なぁ、ロシェル」と名前を呼び、続けて 『やっぱり俺は外で見張りを——』と言おうとしたのだが、察した彼女が即座に首を横に振る。やっぱり一緒じゃないとダメなようだ。


(こういった場合は普通、女性側が戸惑うものじゃないのか?)


そうは思うが比較出来るような経験が無いので確信を持って強気には出られない。むしろここまで過剰に、されども地味な抵抗をする事の方が、より一層ロシェルを異性として意識しているとアピールしているに等しいのか?とも思えてきた。


「明日から本格的に移動して行く事になるんです。私よりも、シドの方がより負担も大きくなるでしょう。なのでしっかり休んでくれないと。寝不足では皆が危険になりかねませんし」


確かに。至極真っ当な正論を言われては、これ以上何も言い返せなくなった。

「わかりました、ご主人様」

ちょっとワザとらしく、敢えて『使い魔』っぽく言ってみる。そうでもしないと、この狭過ぎる空間では色々な事を割り切れそうになかったから。

そんな俺の葛藤など素知らぬロシェルは横になるためにローブを脱ぎ、それをテントの中に敷布団代わりにと敷いた。魔法を発動させて光り出した指先でポンッとローブを軽く叩くと、サイズが広がり、二人でも寝られそうな大きさになった。

満足気に微笑み、「弾力も持たせましたら、背中も痛くならないですよ」とロシェルが無邪気に言う。……本当に、一緒に寝る気満々のようだ。

谷間の見える大胆なラインをした白いワンピース姿のまま、彼女が枕に頭をのせゴロンと横になる。掛け布団代わりの布を体にかけると不思議そうに俺の方を見上げてきた。


「シドは鎧を脱がないの?」


そう訊かれて『うっ』と声が喉で詰まった。脱がないと寝難いのは確かだが、身を守る物が無くなるのは妙に心細い。本心としては『このままで』と言いたいところだが、それではまともに寝られる気がしないので仕方なく脱ぐ事にした。

留め具を外し、パーツごとに各部位を外していく。その様子をじっと見詰められ、裸になる訳でもないのに、何故か段々と居た堪れない気持ちになってきた。

「何かあったか?」

「——え?」

「いや、ずっと見ているから……どうしたのかと」

「……え⁈——や、やだ、すみません。そんなつもりじゃ……」

無意識の行動だったみたいで、ロシェルはサッと視線を逸らし、俺に背を向けた。


鎧一式を脱ぎ、トラウザーズとイレイラ特製の鎖帷子姿になる。絹布並みの質感と軽さなのに、頑丈さは通常の鎖帷子以上だと、彼女が得意気に話していた一品だ。このまま寝ても違和感がなさそうだったので、鎖帷子は脱がずに、空いているスペースへ横になった。

ギリギリではあったが足を伸ばして眠れそうだ。


だが、問題は横幅だ。


自分の体格だとロシェルにどうしてもくっついてしまう。ギリギリまで離れようとするとテントの布が邪魔で離れようがない。『もっと向こう側に寄ってくれ』とロシェルに頼むのも失礼な気がして、俺は彼女に背を向ける状態で横向きになって休む事にした。

それでも背中が少しロシェルに触れている気がする。『……これは早々に寝るしかない』と考え、俺は羊を数えるかのように『俺は枕だ』とひたすら頭の中で唱え続け、気疲れした体に感謝したくなるくらい早く眠りに落ちていった。




そんな一行を、木の陰から見守る男が一人。馬車屋にも居た者だ。

「……何も起きませんね」

二人用のテントから期待するような音や動きが感じ取れず、“男”はヤキモキしている。


「鉄の意志でも持っているのですか?……揃いも揃って」


額に手を当てて“男”が深いため息を吐く。せっかく敵襲のタイミングで荷物を鞄ごと入れ替えたのに、全くの無駄に終わった事に、男は落胆が隠せない。


「まぁ……流石に幾夜を共に過ごせば……あるいは——」


だが“男”は、言っていて段々と虚しくなってきた。今起こらない事が、明日や明後日なら起こるとはとてもじゃないが思えない。

多方面にあらゆる手を尽くしておきたい“主人”の命で此処まで来ているとはいえ、『もう放置でもいいのでは?無駄ですよコレ』と、正直なところ“男”は考え始めている。かといって帰るわけにもいかない“男”は近くの木に飛び乗り、太い枝の上で一夜の休憩に入った。

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