テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
恵
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
圭と美花は、互いに核心を言い出せないまま抱えつつ、その後も付き合いを続けていた。
平日の夜は、美花は普段通りに自宅で曲を制作し、動画投稿サイトに楽曲をアップしている。
圭も、仕事が忙しく、『家庭料理 ゆき』を訪れるのは、週に二日程度。
DTM事業部が開発した楽曲作成アプリ『スマートミュージック』が、完成まであと少し、というところでトラブルが続き、予想以上に難航しているためである。
忙しい合間を縫い、圭は、仕事がある程度早く終わった時、夕食を食べに行く事も兼ねて、なるべく美花に顔を出すようにしていた。
彼が店を訪れると、美花の母が彼女を呼び、二人並んで、カウンターで食事をする。
彼女の顔を見ただけでも、圭の疲弊した心と身体が癒されるのだ。
初めて出会った二〇二四年のクリスマスから一年後、二人は、立川駅のすぐ側にあるホテルのレストランで、食事を楽しんだ。
「美花。クリスマスプレゼント、本当にいらないのか……?」
「うん。圭ちゃんと一緒に過ごせる事が、私にとってクリスマスプレゼントだしっ」
「フッ…………そんな事を言われたのは、美花が初めてだな……」
女が喜びそうな物に関して物欲のない美花に、圭は、付き合い始めたばかりの頃、唖然としていたが、これが彼女の性格なのだろう。
年が明け、二〇二六年が開幕すると、圭は美花を連れて、東新宿にある花森神社へ初詣に行った。
「圭ちゃん。どうして花森神社なの?」
「この神社は、多くの芸能人や俳優、芸術家がお参りに来るんだ」
花森神社は、芸事の神を祀っている事で有名であり、境内の一部の柵には、著名なアーティストや芸能人の名前が、朱色の文字で記されている。
「美花が…………これから先も、充実した作曲活動ができるように……な?」
二人は、本殿にお参りした後、お守りを購入し、境内の隅にある芸事の神の社へ足を運ぶ。
二礼二拍一礼でお参りし、賽銭箱に小銭を入れると、圭と美花は静かに手を合わせた。
「今年もいい一年になるといいね」
「そうだな。俺は頑張って『スマートミュージック』の完成を目指すまでだ」
互いに笑みを見せ合い、お参りを終えた二人が、社を出ようとした時。