コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「あの…………お互いに好きだって分かってから、こんな事を言うのもアレなんですけど……」
「ん? 遠慮しないで言ってごらん?」
純が恵菜の髪を指先で梳かしながら、なおも抱き寄せる。
「純さんと、ちゃんとお付き合いするのは…………私の中で、全てが解決してからでも……いいですか?」
「…………元ダンナと、ヤツの母親…………それから不倫相手か」
恵菜のお願いに、純はしばらく黙ったままでいると、眉根を寄せて厳しい表情を浮かべ始めた。
「……全て解決して、私の心が真っ新になってから…………純さんとお付き合いしたいと思ってます」
「…………そうか」
彼は腕を解きながら、ハァッと息を吐き切ると、彼女の小さな両肩に手を添え、向かい合う。
「でも、これだけは言っておく。もし、また元ダンナや元姑、不倫相手がパーク近くで張ってて、恵菜さんに言葉で攻撃してくるんだったら、俺は、ヤツらに対して容赦はしない。君の恋人として守らせてもらう。いいな?」
「…………分かりました」
照れながら微笑みを純に向け、恵菜は小さく頷くと、再び彼は、彼女をそっと包み込んだ。
この日、彼に会ってから何度抱きしめられているだろうか。
蕩けてしまいそうな純の体温に、恵菜は守られていると実感している。
静まり返っている寝室で、彼に抱きしめられたまま、長い指先が彼女の髪に触れた後、繊細な宝飾品に触れるように、白皙の頬へと滑らせていた。
純の指先に感じる優しさに、恵菜は泣きたくなってしまう。
離婚してから、恋愛に対して臆病になっていて、もう誰も好きになる事なんてないかもしれない、と思っていたから。
けれど、昨年のクリスマスに純と出会った事で、恵菜の人生の航路は大きく舵を切られた。
こんなに自分を大切に思ってくれる男の人に出会ったのは、人生で初めてだから……。
頬に触れていた彼の指先が、恵菜の顎に掛かり、上を向かされる。
熱を孕んだ純の瞳に射抜かれ、不意に目の前が影に覆われると、恵菜は彼に、そっと唇を重ねられていた。