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夕方6時、キャンプ場近くの林道。日が傾き、木々の影が長く伸びている。
そこを歩くのは、リュックを背負った高校生の少年。
黄色のパーカーにベージュのチノパン、足元は泥のついたスニーカー。髪は短く、額に汗が滲んでいる。名前は相馬圭吾(そうま けいご)、十六歳。
ポケットのスマホが震える。
《帰り道は長くなる》
意味のわからない短文を見て、圭吾は眉をひそめた。テントに戻るだけのはずだった。
歩き出すと、森の空気は急にひんやりと重くなる。小道の先に夕陽が見えるが、いくら歩いても距離が縮まらない。
背後から、誰かの足音がついてくる——一定の間隔で、圭吾の歩みに合わせて。
振り返っても誰もいない。
再び前を向くと、夕陽はすでに沈みかけ、空は群青に変わっていた。
道端には見覚えのない標識が立ち、「この先 帰路延長」と赤く塗られている。
足音が、もう背中のすぐ後ろで止まった。
圭吾は息を飲み、暗く沈む森の奥へと足を踏み入れた。