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「魔獣が現れたそうじゃないか。魔の森にまたオオカミ頭だとか」
「それにイノシシ頭もだそうよ。いま冒険者ギルドから討伐隊が出ていったらしいわ」
南の森に疾駆する4人の人影。エルフが弓でイノシシ頭に先制する。衝撃こそ与えるものの致命傷には程遠い。
巨人はその膂力で木々を薙ぎ倒しながらオオカミ頭を襲う。
そこで生まれたスキに剣士がそのオオカミ頭特効の魔剣で微塵切りにした。
だがイノシシ頭には通じない。
「みんな! 散開っす!」
魔術士の指示で仲間が散った後にはイノシシ頭の魔獣のみ。
そこに空高く跳びあがった大魔術士が、構えた杖と左手の間に迸る稲妻を生み出す。杖を魔獣に向けて後ろに引いた左手は見えない弓矢を引き絞るような格好。
「そは万物の──
「エイミアちゃん! すぐっ!」
「分かったっすよっ、焦がせっ! ライトニング・クラッシュ!」
掛け声とともに手から離れてズバンッと発動した時には既に貫いている。扱えるものの居ないとされる撃滅の雷。
それは強固な魔獣すらも絶命せしめる、そんな大魔術。
「いつ見てもあれは躱せるものではないな」
「俺の纏魔とどちらが──いや、失敗したときに生きていられる保証がないのはだめだな」
「エイミアちゃんかっこいいよぉーーーー!」
それは虹色に輝く輝石の嵌まったスタッフをもち、妖精の加護を一身にうけたローブを身に纏い、一部に熱烈なファンをもつうさ耳を風になびかせる、人呼んでうさ耳の大魔術士。
「今日も私の華麗な道のりの1ページが増えたっすよ!」
街でスキルを扱うこの者たちのほかにも魔術を使えるものがちらほらと出てきたこの頃は魔力の循環が活発になってきた弊害として魔獣の出現も増えている。と言っても月一ほどでしかないが、それらから街を守るのは彼らの役目となりつつある。
「ダリルーーーー!」
「ダリルさん!」
街の鍛冶屋に凄腕の2人は帰ってきたそのままに直行する。
「街を守ったよ、ダリル褒めて褒めてー」
「フィナさんも活躍したっすけど、私が一体をバチッと仕留めたんすよ! 撫でてください! 耳も、コリコリしてくれていいっすよ!」
泣く子も黙るすんごいエルフも魔獣が裸足で逃げ出すうさ耳大魔術士も、師匠であるこの男の前では甘えたがりの少女でしかなくなる。
ダリルもこれまでの結果として仕方ないと、でもそれも悪くないと椅子ごとタックルされて押し倒されたまま満足するまで撫でてやるのだった。