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彼女の父から、恵菜のエピソードを聞き、純は背筋を伸ばした。
「恵菜さんは、自分の事よりも他人に寄り添う、とても心優しい女性だと思ってます。私は、そんな恵菜さんが……大好きです」
自分でも紅潮してしまう事を言っているな、と純は思うが、これが正直な気持ちだ。
「親としても、こんなに娘の事を想ってくれる男性に出会えて、とてもありがたい。改めて、恵菜の事を……よろしくお願いします」
「こちらこそ…………よろしくお願いいたします」
純はテーブルに両手を突くと、丁寧に一礼した。
***
相沢家で和食中心の夕食を振る舞われ、ビールも頂いた。
恵菜の家族に会えたのは、純にとって、有意義なものになったと思う。
午前中に恵菜を自宅へ送って帰宅するはずが、雪掻きを手伝い、食事をご馳走になったり、彼女のご両親と話をしていたら、あっという間に時間は流れていった。
スマートウォッチを見ると、もうすぐ二十一時になろうとしている。
随分と長くお邪魔してしまった、と思いつつ、純は立ち上がった。
「こんなに遅い時間まで、長居してしまい、申し訳ありません。そろそろお暇させて頂きます。今日は昼食と夕食までご馳走になり、ありがとうございました」
彼は恵菜の両親に、軽く会釈をする。
「こちらこそ、突然雪掻きを手伝ってもらって、申し訳なかったね。お陰で助かったよ。ありがとう」
「谷岡くん、また遊びにいらっしゃいね。ホラ恵菜。谷岡くんを送らないと」
「あの、門の所で十分ですので……。長時間、お邪魔しました。ありがとうございました」
玄関に向かい、純は彼女の両親に挨拶をすると、恵菜も彼の後に続いた。
自宅の門の前で、純と恵菜は向かい合うと、彼は両手で小さな肩をそっと掴んだ。
「恵菜。今日は長い時間一緒にいられて、嬉しかったし……楽しかった。本当にありがとう。お父さんとお母さん、いい人たちだな」
「こちらこそ、送ってもらうはずが、雪掻きまでさせてしまって…………すみません」
恵菜がペコリと頭を下げると、筋張った大きな手が、彼女の頭を滑るように撫でた。