「 ねぇ ! 羽優の彼氏の話 ! 聴かせて ! 」
如何にもテンションが高そうな耳が痛い程の声で机に突っ伏す私に話し掛ける眼の前の女 。
友達 、 とは呼びたくない 。
親友 、 幼馴染 、 家族 、 顔見知り 、 同級生
嗚呼どうしよう 。
此の女は何にも分類されない 。
私の中では迷惑で煩い女である 。
‘ 羽優の彼氏 ’
其の単語をここ数十秒で何回口にしたのだろう
うざったい 。
真っ暗な視界の外でひとり燥いでいる彼女 。
高校生になってからというもの運悪くずっと同じクラスに割り振られてしまっている 。
教師による新手の虐めだ 。
「 ねぇ 、 聴いてる ? 」
「 聴いてない 」
休み時間は残り7分 、
さて 、 此の状況をどう凌ごうか 。
脳をフル稼働させて考え出す 。
素直に煩いと言う
杜真を呼んで助けて貰う
仕方無く応じる
選択肢は3つだ 。
1の場合 、 拗ねたら何を仕出かすか判らない 。
2の場合 、 杜真に迷惑が掛かり上に彼女は今以上に彼について聴いてくるだろう 。
3の場合 、 私は面倒だが被害は其れだけだ 。
仕方無い 、 最善の3を選ぼうか 。
「 其れ絶対聴いてんじゃん 」
煩い 。
「 うん聴いてたよ 」
顔を上げた先の彼女は想像以上に近い位置に居た 。
顔を見て思う 。 非常にまずい 。
些か怒った様に頬を膨らませていた 。
「 羽優の彼氏の惚気 ! 」
「 あ ー 、 うん聴きたいなら語るね 。
まず顔が良い綺麗すぎ横顔最強なの強 。 声も良い透き通ってるのに偶にエッジが効いてんの何な訳強すぎ無理 。 そんで何其の身長理想の理想ですが ? は ?? 意味分からん 。 おまけ所か主役でも有る其の性格無理無理無理いやもう本当に大好きですよ ー だ !!!! 」
一息で話し切ってから思い出す 。
此処は私のクラス 。
つまりは彼のクラスでもある訳だ 。
おまけにかなりのボリュームで話した 。
そして 、 休み時間は残り3分 。
ほぼ全員が教室に居る筈で 、 恐らく彼も 、
「 ねぇ 、 非常に聴きたくないんだけど
後ろに 、 その 、 誰か居る ? 」
NOであれ 。
只管そう願う 。
「 まじ御免 、 めちゃくちゃ彼氏居る 。 」
其の言い方では彼氏が大人数居るみたいだ 。
そんな意味の無い余計な思考を遮って 、 恐る恐る振り返る 。
見慣れた姿の彼が居た 。
見慣れないのは其の顔で 、
耳までほんのり紅く染めていた 。
「 … へ ? と 、 ま ? 」
「 うわ最高の現場すぎて超良い 」
彼女はひとり愉しげに態々フラッシュをたいてまでシャッター音を響かせていた 。
「 羽優 、 そんな事想ってたんだ 笑 」
思い起こすと彼に真っ直ぐ気持ちを伝えた事はそうそう無い 。
「 まぁ彼氏だし … 」
自分で言ったにも関わらず照れからなのか語尾が弱々しくなってしまう 。
「 あ 、 今日職員室寄ってから帰らせて 」
「 あ 、 うん 」
辿々しいというのか 、 はたまた付き合って時間は経っていても初々しいというべきなのか
恋愛に慣れていない私には何とも酷な状況だった 。
授業開始のチャイムが校舎に鳴り響く 。
其れと同時に教師が扉を開けた 。
「 授業始め … お前等座れよ 」
呆れた声にやっとの事で頬の熱が冷める 。
ふたりして小さな声で謝って楚々くさと席に着いた 。
授業中に想い出してしまっては顔に集まる熱を冷ますのに必死になった 。
コメント
8件
ものすんごい遅コメ失礼します! 大声で彼氏語る所々ほんと尊すぎて死にますよ、 残りの休み時間考える所とかリアルすぎてやばいです。 羽優ちゃん可愛いし、二人ともテレテレなのがち尊すぎます!
休み時間問わず其の儘いちゃついてくれ(( 羽優ちゃん、杜真くんめちゃ好きで可愛いんだなぁ。 2人に授業要らんでしょ!!!(( は
大声で、しかも一息で言う羽優ちゃん可愛い好き🤦🏻♀️ 居るよなぁ、ずっと話し掛けて来る子() 後ろにちゃんと壮真くんいるのも流石だぁぁ(? お互い照れてるのも可愛い🫶🏻 授業とかもう頭に入らない((