《ナルノ町 ギルド》
ギルドに転移ポータルがヒロユキパーティーの活躍により起動した後、続々と騎士や冒険者、ギルドの従業員が転移してきていた。
みな、最初はそのおぞましい光景に息を飲み、嘔吐し、気絶する者も居たが、死体に慣れている冒険者や騎士達が率先して処理をしたおかげでギルドは徐々に元の姿を取り戻しつつあった。
「危ないと思ったらすぐに引くんだよ!」
大量のブルゼを相手に1人で戦っていたナオミだったが今は増援を指揮している。
「ナオミ様!空から__」
「__っ!?」
その中、空から何かが驚異的な速さで垂直に落下してきた!
大気が裂ける音が一瞬にして響き渡り、その衝撃が地面を揺るがすと、土煙が立ち上る中から現れたのは漆黒に輝く鎧を身にまとった騎士であった。
____と、騎士の腕の中で、青いドレスが優美に揺れる中、眠るお姫様の姿は宛如天上の仙女のようだった。その美しさはまるで夜空に輝く星々のようであり、その姿を見た者は心を奪われるほどの美しさに魅了される。
……………………実際は白目向いて気絶してるだけのアオイだが美しさのあまり他の人達にはそう見えているだけだ。
この場合、黒騎士がピックアップされてるのだがいつの間にかアオイの事を見ているみんなが居る。
代表騎士のナオミはいち早く我を取り戻し黒騎士に冷静に問う。
「何者だい、アンタ達」
「……」
「その娘……助けてくれたのかい?なら此方が引き取るよ」
「俺は護衛をしているだけだ」
「護衛?」
ナオミはもう一度その美しい女性を見ると胸に35と刻まれている、それは奴隷の証。
「奴隷が護衛をつけるって言うのかい?」
「……」
そんなやり取りをしていたら本人が目を覚ました。
周りを見渡し自分の状況を把握する。
「ち、ちょっとおろしてくれるかな?」
美しい声、まるで天使の歌声のように、空間を満たす。
黒騎士は優しく降ろし、アオイの足が地面に着地した瞬間!
「「「「「ヴヴヴヴヴヴ!」」」」」
「ええええ!?な、なに!?」
周りに居た人間サイズのブルゼが一斉にアオイ目掛けて襲いかかって来たのだ!
アオイはそのまま反射的に頭をおさえてしゃがんでしまう!
しかし、黒騎士も一早く気付く。
「……」
敏鋭な洞察力でハエたちの行動を見抜き、アオイに襲いかかる直前で、漆黒の短剣を振り回してブルゼを次々と倒していった。
「あ、ありえない」
騎士の一人が呟く……
一匹に何人もかかってようやく倒せる相手を目の前の黒騎士は一瞬で倒した。
それはつまり、目の前の黒騎士は代表騎士と同等の力を持っている証明にもなったのだ。
「え、えーっと、強すぎない?」
何も無いので顔をあげたアオイちゃんも流石にドン引きの強さ!
「…………」
ゆっくりと黙ってナオミはアオイに近づいていく。
「あ、あの……これはですね」
「あんたがこいつの雇い主かい?」
「え?あ、はい?」
「なーんで疑問系なんだい、アイツはアンタの護衛って言ってたが……目的は何だい?」
「あの、僕も討伐に参加させてください」
「ハッハッハ!確かに人手は不足していて足りない、だが無理は言わない方がいいよ、あんた見たところ奴隷だろ?ここはあたし達に任せ__」
そこでアオイは話を遮る。
「__僕を連れていくと、この護衛がついてきます!」
「……そりゃ、こんな強い奴が味方してくれるならありがたいが……ならアンタはギルドの中で待機してソイツだけ付き合ってもらうってのはどうだい?」
「そ、それは……」
ぐうの音も出ない正論。
代表騎士からみればアオイの実力は見て取れる。
____だが唐突に来たその声をアオイは聞き逃さなかった!
「……アオイ?」
「ヒロユキ君!?」
その声は元の世界で嫌と言うほど聞いて来た弟の声。
「なんだい?あたしの旦那と知り合いなのかい?」
「!!!!!!????うぇえええ!?!?!?!?!?」
「未来のね」
「しょ、しょうなの?」
ヒロユキはナオミの発言を無視してアオイの元へ近寄って来る。
「……本物か?」
「え?あ、そ、そうだよ!本物だよ!」
「……生きててよかった」
どう見てもヒロユキの方がボロボロなのだが……
「お互い様にね」
「あたしゃ空気かい、それよりヒロユキ、あんたこの女と知り合いかい?」
「……知り合い」
「そうかい、あの親玉のブルゼの討伐に参加させろって言って来てね、アンタはダメだけどあの黒い奴は……あれ?」
「え?」
「……?」
ナオミは黒騎士を紹介しようとしたがいつの間にか居なくなっていた。
「……良くわからないが、アオイを連れていくなら賛成だ」
「!?」
思っても無かった弟の言葉にアオイは驚く。
「ほう?あんたが言うって事は何かあるね?…………わかったよ、あの護衛がどこに消えたかわからないが、あたしの見込んだ男がそう言うなら連れて行くしかないね」
「が、がんばります!」
アオイはこの状況を作ってくれた弟に感謝しつつも“もう1人”の気になっていた人物の事を尋ねた。
「そういやリュウトくんは?」
「……来ていない」
「え?来てない?そんなこと……まさか!」
「……」
あのリュウトがこの状況で逃げるわけがない。
さらには死んでいるとも思えない……この場にいるアオイとヒロユキの2人は一つの答えに辿り着いた。
親玉のブルゼはずっと大きな移動をしていない!
「はやく助けにいかないとね」
「……うむ」
ついに、3人の勇者が揃う時が来たのだ!
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