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“……この怪物との戦いがどれだけ長く続いているのだろうか。”
そう考えながら、疲れきった表情で自分のレイピアを振りかざし、怪物の巨大な足を突く。
攻撃は怪物の硬い外殻を貫通するが、そのサイズの大きさゆえに与えたダメージはあまり感じられない。
「くそ!【武器召喚】さえ使えれば!」
「出ないものを言っても仕方ないょ、リュウトっ」
隣から、艶やかな白銀の髪を揺らしながら少女の声が聞こえる。彼女は怪物の攻撃を巧みにかわし、魔法を駆使して反撃している。
「みゃ!弱点はまだ見つけられないのか!」
「ごめんねっリュウト……さっきからずっと『魔眼』を使ってるけどまったく見えないょっ」
「弱点がないとかあり得るのか!?うお!」
少し気を抜いてしまった際、怪物の一撃が襲ってきて、僅かに肌を傷つけられ、腕から血が滲んだ。
しかし、その場に居合わせた茶髪のお姉さん、《アンナ》が傷を癒してくれる。
「私から見たらあんたらもよっぽどヤバい人間達よ!」
「そういうアンナさんがいて助かってるよ」
「じゃぁこれでまた貸しが1つ増えたってことね」
彼女は女神の気配を追っていた時に、崩れた建物の下敷きになってしまっていたのだ。
幸い、彼女を助けることができたが、その際に彼女は記憶を一部失ってしまっていた。
……それでも恩を返したいと言ってついてきてくれたのだが……
「やっぱり俺たちのパーティーにヒーラーは必要だったな」
アンナさんの回復魔法は的確で恩返しレベルではない……普通にこれから先、俺達のパーティーに必要な人材だ。
「また女の人をスカウトするつもりですか、リュウトさん?」
そう問いかけながら、化物の周囲をハンマーを手に走り回る猫耳の獣人、アカネが合流した。
「んな!?たまたまだよ!たまたま!それに男にだって声かけるし!」
「じゃぁ聞きますけど今まででヒロユキさん以外に声かけましたか?」
「……」
「ほら!かけてないじゃないですか!」
アカネは猫耳ぴんっと立てながらぷりぷりと怒る。
「そ、そんな事より!アカネ!疲れてないか?ここは俺で時間を稼ぐから一度撤退してもいいぞ?」
化物がストローの口から酸の液を出してくるのを察知しそれぞれ避ける。
「私はまだまだ大丈夫です!リュウトさんこそ休みなしじゃないですか!」
「俺は勇者だ、こんな事では疲れない」
……と、言ったものの……何時間も緊張状態と言うのは精神的に疲れて行く。
先ほどの攻撃も当たるはずないと思っていたからな……体力よりも精神面を気にするべきか……
「リュウトっ、さっきギルドの方で光が見えたからあっちでも何かあったのかもっ」
「あぁ、途中から小さいやつらも居なくなって中くらいのやつらも帰ってこない所をみると俺達の他にも動いてるやつらが居る」
口では“誰か”と言いながらも頭の中ではもう一人の勇者の姿を思い浮かべていた。
「負けてられない!」
気合いを入れ直して攻撃を再開するが、たちまち再生される。
「こいつ……クリスタルドラゴンより再生速度早くないか?」
「攻撃しても一瞬で塞がるねっ、この能力を持ってるってことは女神からの加護もあるかもっ」
「ったく、この世界の女神は余計なことしかしない!」
攻撃を与えては再生し、足を切っても羽を傷つけても再生。
先程はああ言ってたが他の三人はキツそうだ……一か八か決めないと死人が出てしまう!
「くそ!何か、何か状況を打破する方法は無いのか!」
俺が考えている中、その声は聞こえてきた。
「待たせたね!」
「!?」
その声は空間を彩り、心に柔らかな光を差し込むような透明感に満ちていた。
まるで魔法のように、魂が解き放たれ、心が幸福に包まれる。
その美しい声が響くだけで、全身に力がみなぎり、新たな活力が湧き上がる。
__絶対に忘れないその声は__
____俺がこの世界に来て“一目惚れした相手だった”