テラーノベル
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──霧の中、et(私)はmnrの手を握っていた。
その瞬間、世界が反転する。
視界が白に染まり、音が遠のいていく。
そして、目の前に広がったのは──
過去の村。
「ここは……」
etが呟く。
「“あの夜”の、始まりだよ」
mnrが隣で言った。
「君がすべてを忘れる、少し前の夜」
村は静かだった。
けれど、空にはすでに、白い霧が立ちこめていた。
「霧が……おかしい」
etが空を見上げる。
「そう。これは“呼ばれた”霧だ」
mnrが言う。
「誰かが、禁忌を破った。
霧を操り、記憶を奪い、世界を変えようとした」
「誰が……そんなことを……?」
mnrは、etの手を握り直した。
「それを知るには、もう少し奥へ行かないとね」
ふたりがたどり着いたのは、村の中心にある“霧の祭壇”。
そこには、見覚えのある人影が立っていた。
「……あれは……mf君?」
「mfの前に、この村の記録を守ってた奴だ、
この村の記録を守る者だった人だよ」
その人物は、祭壇に霧晶核を捧げていた。
そして、何かを唱えている。
「記憶を……封じてる?」
etが眉をひそめる。
「いや、違う。
彼は“記憶を奪う霧”を作ろうとしていた。
過去を消し、都合のいい未来を作るために」
「そんな……!」
「僕たちは、それを止めようとした。
でも、間に合わなかった。
霧は暴走して、村を包み込んだ。
そして──君の記憶も、巻き込まれた」
etは、胸を押さえた。
あの夜の恐怖が、じわじわと蘇る。
「私は……何もできなかったの?」
「違うよ。君は、僕を止めようとした。
僕が“霧に飲まれる”ってわかってて、
それでも、僕の手を離さなかった」
「……っ」
「だから、僕は決めたんだ。
君の記憶から、僕を消すって。
君が前に進めるように」
etの目から、涙がこぼれた。
「バカだよ……そんなの、優しすぎるよ……!」
「でも、君が笑ってくれるなら、それでよかった」
mnrは、そっと微笑んだ。
「でも、もう大丈夫。
君は、ここまで来た。
自分の足で、記憶を取り戻した。
だから──」
彼は、etの手を離した。
「これで、僕は本当に、君の中に戻れる」
霧が、静かに晴れていく。
「etさん……?」
noさんの声が、現実に引き戻す。
etは、祠の前で目を覚ました。
「etちゃん、大丈夫!?」
rnが駆け寄る。
「……うん。全部、思い出したの。
私の記憶も、あの夜のことも……
そして──mnrのことも」
「mnr……」
mf君がその名を繰り返す。
「私の……お兄ちゃん。
私を守って、霧に消えた人」
「etさん……」
noさんがそっと目を伏せた。
「でも、もう大丈夫。
私は、忘れない。
mnrのことも、あの夜のことも──全部、私の中にあるから」
霧は、静かに晴れていた。
まるで、長い夜が明けるように。
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