テラーノベル
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昼休みの教室。三人だけが取り残された空間。
他の生徒たちのざわめきが、遠くに聞こえる。
蓮司「ねぇ、“班決めで静かにパニックになるやつ”あるあるって知ってる?」
遥「あれだろ? 誰を最初に殴るかで迷うやつ」
日下部「……違う」
蓮司「惜しいけどだいぶ間違ってる。
“仲良いグループ”で固まるやつだよ。
それができないやつは、なんか机と目を合わせて祈る時間に突入する」
遥「あー……。
なんか“勝手に決まってた”ことにされて、後から“あ、ごめん!こっちもう埋まっちゃってて!”って笑われるやつ」
蓮司「それ。“ごめん”の使い方が便利すぎる事案。あと、“あとは先生が割り振るから”って言ってくる優等生が神の代理人みたいになる」
遥「“先生が決めた”って言っとけば、誰も恨まないんだよな」
日下部「……でも、誰が“余ったか”は、みんな覚えてる」
(沈黙)
蓮司「じゃあ次。
“給食のパン配るときに、人気のやつだけ秒で消える”現象」
遥「え、パンって余ったやつ殴って奪うんじゃないの?」
蓮司「やっぱ遥の学校、北斗の拳だった?」
日下部「……静かに手を挙げて、“ください”って言うだけだと思う」
遥「え、まじ? じゃあ“一口ちょうだい”とか言ってガブって半分くらい食べてたの、普通じゃないの?」
蓮司「アウトだよ。おまえの“普通”は割と野生寄りだよ」
日下部「……でも、なんとなく想像はできる」
遥「そういうとこで“人間関係”とかできてくんだなー。へぇー……すげえ、給食って社会だったんだな……」
蓮司「感想が原始人のそれ」
遥「……てかさ、なんで“みんな同じもの食べる”の?
なんか“共有してます感”って逆に怖くね?
“これが日常だよ”って押しつけられてる気分」
日下部「……それが、“安心”だって、信じてる人が多いから」
蓮司「“同じ釜の飯”を食うってやつだな。
でもそれ、苦手なやつには地獄だよな。“同じじゃないとダメ”っていう圧力に変わる」
遥(少し笑って)「オレ、パンだけ机に並べて、一人で“財産”って呼んでた時期ある」
蓮司「その話もっと早く聞きたかった。
遥がパン7個並べて“我、富めり”とか言ってたの想像したらめちゃくちゃウケる」
日下部「……遥は、“普通”じゃない。でも、正直でいいと思う」
遥「……まあ、“わかんない”ままでも、生きてけるってのはわかったよ。
別に、“合わせなきゃ死ぬ”ってわけじゃないんだな」
蓮司「そう。合わせなくても死なないけど――
たまに、孤独で死にたくなる。それが学校」
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