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第11話読み終えたわ!いやー、モスコウビア陥落の描写がめちゃくちゃリアルで引き込まれた。内部からの火災と門の内通者、その隙に雪崩れ込む騎兵…歴史上の攻城戦を彷彿とさせる流れで「あっ…」ってなったわ。セヴェリウス皇帝の「エウロピアは終わるかもしれぬ」がもう全てを物語ってる感じで切なかった。最後のバトウの「玉座は冷たい」も、征服した側の虚しさが滲んでて良いスパイスだわ。続きどうなるんやろ🔥
ヴァンガルド帝国の首都、モスコウビア。
その巨大な城壁を、十五万のモンゴリア帝国軍が幾重にも取り囲んでいた。
東方より押し寄せた――恐怖の王。
その襲来を前に、帝都になすすべはなかった。
モンゴリア軍が恐ろしいのは、平原を駆ける騎馬軍団だけではない。
彼らは東方から、チャイ人の工員や技術者を大量に連れてきていた。
巨大な投石機。
城門を打ち砕く破城槌。
城壁へ兵を送り込む攻城塔。
征服した国々の技術を取り込みながら、
モンゴリア軍は戦うたびに強大になっていた。
平原では騎馬軍団が敵を蹂躙し、
城に籠もれば、攻城兵器が城壁を打ち砕く。
逃げても追われる。
籠もっても破られる。
野戦においても。
攻城戦においても。
もはや、この軍勢に立ちはだかれる者はほとんど存在しなかった。
それでもモスコウビアは耐え続けた。
高い城壁。
深い堀。
大量の兵糧。
帝国最後の砦として、幾度となくモンゴリア軍の攻撃を退けてきた。
だが――。
その失陥は、あまりにも突然に訪れた。
「火だ!」
城内の一角から叫び声が上がった。
直後。
別の場所からも炎が上がる。
さらにもう一か所。
そして、もう一か所。
まるで示し合わせていたかのように、城内の数か所から同時に火の手が上がった。
「消せ!」
「水を運べ!」
兵士たちが一斉に走り出す。
守備隊の注意が城壁から城内へ向いた、その時だった。
ゴゴゴゴゴ……。
重い音を立てて、東門が開き始めた。
「なぜ門が開いている!」
誰かが叫んだ。
答える者はいなかった。
そして次の瞬間――。
地響きがした。
開け放たれた城門の向こう。
無数の騎馬が姿を現す。
「敵襲!」
その叫びは、たちまち蹄の音に呑み込まれた。
モンゴリア騎兵が雪崩れ込んでくる。
門を守ろうとした兵は押し潰され、
逃げる者は背後から斬られた。
城内では炎が広がり続けている。
家々が燃え、
倉庫が燃え、
通りには逃げ惑う人々が溢れた。
そこへ次々とモンゴリア兵が流れ込んでくる。
もはや守備隊に、軍としての統制は残っていなかった。
その光景を。
皇帝セヴェリウスは、宮殿の窓から黙って眺めていた。
遠くでは、黒煙が空を覆っている。
帝国の旗が燃えていた。
城壁の上には、すでにモンゴリアの旗が翻り始めている。
長い戦いだった。
抵抗するために、できることはすべてやった。
それでも。
止めることはできなかった。
セヴェリウスは深く息を吐いた。
「エウロピアは……終わるかもしれぬ」
それは皇帝としての言葉ではなかった。
一人の老人が、
自分たちの時代の終わりを目の前にして漏らした、疲れ切った呟きだった。
やがてセヴェリウスは目を閉じた。
ほどなくして、宮殿の外が騒がしくなった。
怒号。
剣戟。
兵士たちの悲鳴。
それらは次第に近づいてくる。
そして――。
扉が蹴破られた。
武装したモンゴリア兵が、一斉に室内へ雪崩れ込む。
近衛兵が剣を抜いた。
だが抵抗は、ほんのわずかな時間しか続かなかった。
一人。
また一人。
近衛兵が倒れていく。
やがて皇帝セヴェリウスも捕らえられた。
皇帝が捕縛されたという報せは、瞬く間に城内へ広がった。
まだ抵抗を続けていた守備兵たちも、一つ、また一つと武器を捨てていく。
そして夕刻。
モスコウビアの城壁から、ヴァンガルド帝国の旗が降ろされた。
代わって掲げられたのは、
遥か東方よりやってきた征服者たちの旗。
こうして――。
長きにわたりエウロピア東部に君臨してきたヴァンガルド帝国は、
その歴史に終止符を打ったのである。
「玉座というものは、冷たいものだなあ」
ただ広い謁見の間。
その最奥に置かれた、背の高い椅子に腰を下ろしながら、バトウは率直な感想を口にした。
ヴァンガルド帝国皇帝が代々座ってきた玉座。
つい昨日までなら、外国の将がここに腰掛けるなど考えられなかっただろう。
だが今、その玉座に座っているのは――。
モンゴリア帝国、征西軍総司令官バトウだった。
宮殿の外では、今なお略奪が続いていた。
兵たちは家々へ押し入り、金銀を奪い、家畜を引き出し、
倉庫という倉庫を開けて回った。
帝都モスコウビアにおける略奪は、十日に及んだ。
そして、モンゴリア軍の侵攻は帝都だけでは終わらない。
周辺諸都市へ向けても、すでに軍勢が放たれていた。
モンケ。
グユク。
そして、帝国各地から集められた皇子たち。
彼らはそれぞれ軍を率い、次々と都市を攻略していった。
方針は単純だった。
降伏する者には寛容を。
抵抗する者には殺戮を。
城門を開けば命は助ける。
だが、一度でも抵抗すれば容赦はしない。
その噂が広がるにつれ、戦わずして門を開く都市まで現れ始めた。
抵抗する都市は焼かれ。
降伏する都市は兵站基地へと変わる。
一つの都市を落とせば、そこを足場にさらに西へ。
また一つ落とせば、さらにその先へ。
まるで無人の野を駆けるがごとく――。
モンゴリア帝国軍の侵攻は、とどまるところを知らなかった。
そしてバトウは、その報告を玉座の上で聞いていた。
だが。
彼が知りたかったことは、落とした都市の数でも、奪った財宝の量でもなかった。
「行かれますか」
スブタイが静かに問うた。
「ああ。行こう」
傍らにいたジュベは、何のことか分からず二人を見比べた。
バトウはしばらく黙っていた。
バトウは玉座から立ち上がった。
向かう先は、モスコウビアではない。
かつてヴァンガルド帝国の中心であり、
父ククス・ゼイオンが暮らした旧都だった。