コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「奈美っ……!」
やっと……やっと…………豪の想いが通じた瞬間だった。
泣き腫らした顔を彼の胸に埋め、安心したのか、嗚咽しながら雫を溢れさせ、豪の胸板を濡らしている。
濃茶の髪と背中を撫で、彼女の心と身体が落ち着くまで、腕の中に包み込んだ。
豪と奈美が、互いに同じ気持ちを抱いていた事に驚いたが、愛おしい女と想いが通じ合った嬉しさが大きい。
セックスなしのエロい関係から始まった二人が、本当の恋人になるなんて、思いもしなかった。
「豪さ……ん……」
落ち着きを取り戻した奈美が、彼を見上げた。
「どうした?」
「私……」
豪が、彼女の顔を伺い見ると、涙の痕跡を残したまま、はにかみながら笑みを映し出す。
「…………嬉しい……」
「俺も……」
紅潮した彼女の頬に手を添えて、豪は、そっと唇を重ねた。
甘く食み、時に啄むように、何度も唇を重ねていく。
彼女の唇を堪能した後、彼は、焦らすように唇を離した。
「もしかしたら、豪さんと会うのは…………これが最後かもしれないって……思ってたから……」
「俺は、この関係が終わっても、奈美とは一緒にいたいと思ってたけどな」
桜色に染まっている彼女の頬にキスをした後、小さな肩に両手を添える。
「奈美は覚えてないか? いつだか俺が『次に彼女ができたら、ものすごい一途になると思う。きっと溺愛してしまう』って言った事……」
「……覚えて…………ます……」
「あと、奈美もこんな事言ってたな」
揶揄いながら、ニヤリと笑う豪。
ニヤリどころか、彼は嬉しさのあまり、破顔しそうになるのを堪える。
「え? 私……?」
「忘れたか? 君は俺に『次に彼になった人は私が好き過ぎて、嵌ってしまうような気がする。自分が怖くなるくらいに、ドロドロに堕ちて……』って言ったんだ」
「…………」
彼女は思い出したようで、過去の発言に、顔を真っ赤にしながら俯いた。