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「美花! お昼だよ!」
美花が、一階のトラックヤードで、パレットに積まれたインクトナーカートリッジの完成品に、荷崩れ防止のストレッチラップを巻き付けている時、製造部の奈美から声を掛けられた。
「ちょっと待ってて〜!」
パレットの周りをぐるぐる回りながら、ラップを巻いた後、美花は、リーチフォークと呼ばれる立ち乗りのフォークリフトに乗り、荷物を出荷エリアに移動させる。
ヘルメットを外し、トラックヤードから離れた場所で待っている奈美の元へ向かった。
「なみプー、遅くなってごめんっ!」
「今日は天気もいいし、外のベンチに座って食べようか」
「全然オッケー」
美花と奈美は、会社の玄関のすぐ側にあるベンチに座り、持参してきた昼食を膝の上に広げた。
「それにしても、なみプーの旦那さんって、かなりカッコいいよねぇ? 結婚式の時、初めて見て、昨年のクリスマスに、会わせてもらって飲みに行ったけどさぁ、優しい人だよね。しかも、本社勤務でしょ?」
「まぁね。でも、七つ歳上だから、今でも私を子ども扱いしてくるよ。美花は、私の結婚式に出席した時、豪さんの友人で、いいなって思う人はいなかったの?」
奈美から質問されて、美花はフッと寂しげな表情を覗かせる。
「私……恋愛は…………しちゃダメなんだよ……。仮に、彼氏ができたら…………最終的に相手の男性を……苦しめちゃう事になるし……」
彼女が虚しそうに、言葉を途切れとぎれに置いていく。
「…………やっぱり……あの事が……ずっと……」
「…………うん。もう…………恋愛も、未来も諦めてる……」
「…………美花……」
奈美から、アーモンドアイを下げて心配そうに見つめられ、美花は顔を逸らすと、スマートフォンを取り出して、メールチェックをする。
受信トレイにメールが十通ほどあり、そのうちの一通の送信先を見た彼女が、瞳を一瞬丸くさせた。
送信者は、『ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツ DTM事業部 葉山』と書かれている。
美花は、首を傾げながらも、メールを開いた。
『Hana様。突然のご連絡、失礼致します。ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツ DTM事業部の葉山と申します。Hana様の楽曲を拝聴させて頂き、DTMで、ここまで迫力のある音楽、または繊細な音楽を奏でられるのか、と感動しました』
おおぉ、と声を零しつつ、彼女は、画面に指を滑らせていく。
『そこで、Hana様に、ひとつ依頼したい事がございます。現在、弊社が開発中のスマートフォン用の楽曲制作アプリ『スマートミュージック』を使用して、楽曲を制作して頂き、Hana様に使い心地、またはご意見などを伺いたく思っております。お忙しいとは思いますが、お返事を頂けたら幸いです。以上、よろしくお願い致します』