ギルドの受付は、レイが新規登録者とは思えないほど討伐依頼をこなす姿に目を見張っていた。
受付「間違いねぇあいつ“黒煙魔術師”のレイだ最弱のアイツが、まさかあんなに強くなってたとはな…」
そんな雑踏の中、レイが報告書を提出していると、不穏な3人組の男たちが近づく。
冒険者A「よう、噂のレイさんじゃねぇか。最近レベル上げて強くなってるって話、聞いてんぞ」
冒険者B「いいご身分だよなぁ。そんな余裕ぶっこいてたら、俺らが黙っちゃいねぇぞ」
冒険者C「ちょっと手合わせしろや!俺ら3人相手に勝てるなら大したもんだ」
レイはちらりと一瞥し、ため息まじりで睨みつける。
「……めんどくせぇ殺されたくなきゃ今すぐ立ち去れ」
冒険者A「あ?てめぇ、なに偉そうに……」
そう吐き捨てると、男の一人が巨大な斧を振り上げ、レイめがけて叩きつけてきた。
ズドンッ!
しかし――その瞬間、レイの体から溢れた黒煙が辺りを包みこむ。視界が完全に奪われた。
冒険者B「な、なんだこれ!?何も見えねぇ!」
冒険者C「くそっ、どこいったあいつ……!」
闇の中でレイの低い声が響く。
「……所詮小物が、3人集まった程度で勝てるわけないだろ。見えねぇだろ?」
突然、レイの気配が斧を持った男の背後に現れた。
「――シャドウ・イグニス」
冒険者A「!?」
斧が黒煙に包まれ、あっという間に灰と化して手から崩れ落ちる。
冒険者A「う、うわぁぁぁ……!俺の斧が……灰になっちまった!?」
次の瞬間、別の男の前に現れるレイ。
「……グロウ・フィスト」
ごぉっ、と炭化したレイの拳が高熱を発し、男の腕をかすめる。
冒険者B「あちぃぃぃ!!だ、誰か助けてくれぇぇぇ!」
最後の1人も立ちすくみ、恐怖で身体を震わせている。
冒険者C「ご、ごめんなさい、勘弁してください……!」
レイは黒煙をまといながら、苛立ちを噛みしめる。
「……めんどくせぇな。マジで騒ぐなって言ってんだよ。下らねぇヤツら……二度と俺の前に顔出すな」
黒煙が徐々に晴れていき、3人組は地面にしがみついたまま、這うようにして逃げていく。
通りすがりの冒険者やギルドの受付が茫然とその一部始終を見ていた。
受付「……やっぱりあの人、ただもんじゃないわね……」
冒険者D「もうアイツには逆らわないほうがよさそうだ……」
だが、レイはそんな視線をまるで気にする様子もない。
黙ってギルドに背を向け、扉を押し開けて外へ出ていく。
(……くだらねぇ。誰とも群れねぇ、俺は俺のやりたいようにやるだけだ。それが一番気楽だ……)
夕暮れの村を、黒いコートを翻しながらレイは歩き出す。